【OBUコーチ】負ける時の心理と勝つ時の心理とは?②
(前号より)
私は気持ちの整理がつかないまま、3位決定戦のためにフロアに降りました。
敗戦のショックは大きく、なかなか気持ちを切り替えられずにいました。
このままではいけない。
頭では分かっているのですが、心はコントロール出来ないものだと、この時ほど思ったことはありませんでした。
3位決定戦、始まる
対戦相手のSさんは、以前1度だけ対戦して、その時は2-3で負けました。
その時は、私の良さも出た試合でしたが、Sさんの方が一枚上、という展開でした。
異質攻撃型のSさんは、
- 正統派の攻撃型の様に一気呵成に攻め込んでくる面
- 変化球で相手を混乱させる面
の2つの面があります。
試合が始まりました。
激戦を勝ち上がってきたSさんからは、何となく試合を早く終わらせたいという雰囲気が感じられました。
早い段階から積極的に攻撃を仕掛けられ、私は防戦一方でした。
私がサービスを持った時は、勇気をもって攻撃もしました。
自分では健闘しているつもりでしたが、全体的には固さが抜けておらず、気力も足りていないプレーだったと思います。
1ゲーム目を落とし、続く2ゲーム目も私は押し切られてしまいました。
これで私は、完全に後が無くなりました。
私の中で、「負けのシナリオ」を自分で作って演じ始めていました。
「頑張ったけど、代表には届かなかった。それでいいじゃないか。楽になろうぜ」という、心の声を必死で打ち消していました。
ベンチに戻ってひとり考えたこと
3ゲーム目にベンチに戻り、水分を摂りながら考えていました。
「代表になる云々は、一旦、忘れよう。それよりも、目の前の1本、目の前の1球(に集中)だ・・・」
3ゲーム目が始まりました。
1、2ゲーム目でやられたSさんの攻撃をもう一度思い出しながら、やってくることを必死で予測するようにしました。
Sさんがどんなサービスを出して、どう攻めてこようとしているか、です。
上手く対応出来た時もあれば、逆にやられてしまうこともありました。
サービスを持っている時は、相変わらず積極的に攻撃しました。
ミスも出ましたが、だんだん思い切りの良い攻撃が出来るようになってきました。
転機
気がつくと、3-9で負けていました。
あと2本取られれば、試合終了です。
私は、「だからどうしたと言うのだ。そんなものは関係ない。目の前の1本、目の前の1球だ!」と思っていました。
この心理状態は、1種の「開き直り」だと思います。
3ゲーム目の最初からそう思ってやって来たのですが、やはりすぐに出来るものではない様です。
本当の意味で開き直れたのは、このポイントだった様な気がします。
そこから私は、いわゆるゾーンに入ります。
1本、また1本と得点を積み重ね、ついに9-9まで追いついたのです。
ジュースに持ち込まれたものの、ラッキーなエッジボールが私について、3ゲーム目を大逆転で私が取り返しました。
4ゲーム目に入っても、私の精神状態は全く変わりませんでした。
とにかく、Sさんのやって来る攻撃に意識を集中して、
- 1本でも多く返すこと
- チャンスと思えば思い切って攻撃すること
このことだけを、私は意識していました。
Sさんからすれば、今まで決まっていたボールがだんだん決まらなくなり、1本多く強打しなくてはならなくなった。
その分、無理をしなくてはいけなくなった、ということでしょう。
私は、完全に迷いが無くなりました。
精神的に吹っ切れました。
4ゲーム目を接戦で取り、追いつきました。
最終5ゲーム目の最初の2本だけ緊張して凡ミスしましたが、最終ゲームのセオリー、
- 最終ゲームは5本目を先に取る
- 5本取ったら次の1本を必ず取る
を実行しようと思い、それが出来ました。
最後は、3球目のスマッシュを決めて、11-6で勝つことが出来ました。
私は目標だった代表枠の最後の1つを、ギリギリのところで勝ち取りました。
試合中にやっていたこと
ここまでメンタルを中心の内容でしたが、技術的な事も(当然)考えていました。
具体的には、以下の様なことです。
サービスを出す時には、
- ハーフロングに変化サービス
- 両コーナーへスピードサービス
- 出す位置を変える
- 投げ上げる高さを変える
を意識してやっていました。
このため、サービスエースが以前より増えましたし、3球目攻撃に繋がりました。
またレシーブ時には、
- 相手がトスを上げている最中に、フライングして足をイチ、ニと動かすこと
を意識してやりました。
その分、動きが良くなり、レシーブミスも少なかった様に思います。
前陣でのカウンターも、本数は少ないですが何本か出来ました(以前はそもそも狙うことすらなかった)。
また、こちらがカウンターを狙っていることが相手に分かってしまうと、直前にコースを変えられてしまうことも今回よく分かりました。
カットした後の反撃は、たとえ全力で打ったボールでなくても相手には有効であることが分かりました。
やはり、打つべきです。
これらは、全て練習してきたことです。
「練習の成果を試そうとしたか、また実際に試合で試せたか」という観点からすれば、まずまず出来たと自分では思っています。
メンタルの強い選手、弱い選手
よくメンタルの強い選手、逆に弱い選手と分類することがあります。
私はどちらに分類されるのだろう、と試合後に考えました。
前号と併せてお読みいただき、読者の皆さんはどう感じられたでしょうか。
私は、
- 代表枠のかかった試合で監督の一言が気になり、対戦成績で分の良い相手にも固くなって負けてしまうほど、メンタルの弱い選手
でもあるし、
- 普通の選手なら勝負をあきらめてしまう状況でも「それがどうした」と頑張り抜き、周囲に反対されても自分の信じる卓球をやり続けて大逆転するほどメンタルの強い選手
でもあるのです。
分類からすると、私は「どっちでもある」し「どっちでもない」のです。
内部に矛盾を抱えているのは、実に人間らしいことだと自分では思います。
前を向く
試合が終わって数日経ったある日、街中を通っていると、あるお寺の門前にこんな訓戒を見つけました。
「強くなりたいなら、自分の弱さを知れ」
今の私にぴったりの言葉でしたし、今回自分の弱さや未熟さを知ったお陰で、「まだまだ自分には強化すべき点、つまり伸びしろがあるのだ」と素直にそう思うことが出来ました。
また、練習をコツコツ頑張っていきます。
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昭和40年12月31日生まれ。血液型O型。兵庫県西宮市出身。現在は静岡市在住。
中学1年より卓球を始め、卓球歴は40年以上。中学高校時代は鳴かず飛ばずの成績。高校時代は県大会前の地区予選3回戦ボーイであった。インハイなど全国大会出場経験無し。大学時代飛躍的に卓球技術が向上。東海学生卓球リーグ2部で全勝しチームの優勝に貢献し敢闘賞を受賞。3人の元インハイ出場の選手に勝つ。30代の時に東海選手権(年代別個人戦)で、ベスト8に入る。高島規郎選手、古川敏明を選手を師と仰ぐ。現在も現役選手として試合に参加している。静岡市卓球協会の常任理事として静岡市の一般の試合の大会運営や広報活動を行う。また中高生の指導に当たる事もある。2005年から卓球のメールマガジンを発行中。現在も続いている。著書「OBUさんの初心者卓球上達法~卓球が上手くなりたい人へ」(文芸社)