全日本選手権を終えて
全日本選手権が終わりました。
男子では新チャンピオンとして20歳の戸上隼輔選手が、女子では伊藤美誠選手が優勝しました。
他にも実力ある選手が沢山いて、誰が優勝してもおかしくない大会だった様に思います。
オミクロン株が猛威を振るうコロナ禍で、多くの選手が棄権するという異例の大会でもありました。その中で二人が抜け出た形でした。
今号では全日本選手権を終えた今、私が感じていることを述べます。一意見として読んで頂けると幸いです。
共に世界を目指す
優勝した戸上隼輔選手は、聞いているこちらが「頼もしい!」と思う、素晴らしいコメントを残しました。
「世界卓球から今回の全日本までの期間で、パワーアップ出来たのではないかと実感がある。自分が引っ張り、日本を背負って戦う覚悟がある」
戸上選手は現在20歳です。
やはり若い人はこうでなくては、と私などは思ってしまいます。(^^;;
先の世界卓球の男子シングルスでも、張本選手など上位進出を期待された選手が敗れる中、一人気を吐いたのが戸上選手でした。
しかしながら、世界卓球ではその戸上選手でさえも、中国の王楚欽選手に敗れています。
実力差があったように私には見えました。
戸上選手は全日本チャンピオンになった充実感を漂わせながらも、すでに世界を視野に入れリベンジを誓っている様に私には思えました。俺がやってやる、と。
今大会ではたまたま敗れはしたものの、実力的に世界を狙える選手は戸上選手の他にも数名います。
コロナは言い訳には出来ませんが、環境が違えば結果も随分と違ったものになっていたのではないか。私はそう思います。
それは女子にも同じことが言えて、日本のエースの伊藤美誠選手が優勝しましたが、後はとても波乱含みでした。
だからこそ、世界を狙える実力のある選手同士で切磋琢磨し、共に世界を目指して欲しいと思います。
今こそ前陣速攻を
伊藤美誠選手の前陣速攻が復活していました。
東京オリンピックまでは、伊藤選手にしては少し台から下がった位置でフォアドライブを打つシーンがいくつも見受けられました。
最初に見た時は、伊藤選手はこんな戦い方も出来るのだと私は驚きました。技術の幅が拡がったなぁとプラスに捉えていました。
事実、混合ダブルスで優勝するまでの試合で伊藤選手のフォアドライブが、全体的に粘り強いラリーに繋がるシーンがありました。
しかし、シングルスではどうだったか。多用すると伊藤選手の良さが消えてしまってなかっただろうか。
私はそんな気がしてならないのです。
伊藤選手のドライブは世界レベルで見たら普通だと思います。中国選手を見れば、もっと凄いボールを打ちますし。
相手にとっては怖くないはずです。その分、ラリーが長引きます。
それよりも、伊藤選手の武器は、相手のドライブを前陣で叩くフォアハンドスマッシュです。
これは相手にとって脅威です。
世界を見ても、今この技術を連発するのは伊藤美誠選手だけではないでしょうか。
世界の誰もやらない技術は、相手が取り慣れておらず、効くわけです。
このフォアハンドスマッシュが全日本選手権で復活していました。
思えば、台から下がってのフォアドライブは伊藤にとって「混合ダブルス仕様」だったのかも知れません。
男子のボールも受けなくてはならないし、どうしても下がらざるを得ません。
それに比べると、フォアハンドスマッシュの多用は、「完全シングルス仕様」なのでしょう。
日本の男子選手では、この技術を使う選手は残念ながらいません。
前陣でカウンタードライブを打つ以外は、少し下がった位置で両ハンドドライブを打つ選手がほとんどです。
世界でもそれが主流で、皆がやり慣れているわけですから、同じ土俵で秀でていくのは至難の道と言えるでしょう。
ですから私は、「今こそ前陣速攻を」と思うのです。