【OBUコーチ】カットを指導するときに、最初に教えたいこととは?

OBUコーチ カット スキルアップ 練習メニュー

私が社会人になってから、中学生の初心者カットマンを指導することがありました。

友人がある中学校の卓球部の外部コーチをしている関係で、指導を依頼されたのです。

与えられた時間は、1回につき2時間強。

それがある期間をおいて、数回あります。

この中で教えられることは、かなり限られてくるのは分かっていました。

しかし、折角卓球というスポーツを選び、カットマンをやろうと決めた選手たちです。

彼らにやる気を持たせ、これから伸びていくヒントだけでも伝えたいと私は思いました。

最初にどんなことを教えれば良いのか。

私なりに考え、実践したことをご紹介します。

最初に行なったこと

私のところに、3人のカットマンが集められました。

1人は完全な初心者で、後の2人は少しカットを教えたもらったことがある程度の初心者でした。

最初に私が彼らにやらせたのは、「ボール突き」でした。

  • フォア100回
  • バック100回

を、ラケットの上でボールを弾ませます。

やはり少し経験のある選手の方が、若干早く課題をクリアしました。

しかし、クリアのスピードは、それほど問題ではないのです。

3人がクリアしたところで、集合させて、1人一言ずつ気付いた事を言わせました。

何故、そんなことをしたかと言いますと、

  1. 私の指導は一方的に教えるのではなく双方向であることを伝えたかった。
  2. 私の指導は上達のヒントであり答えではない。気付きを感じてコツを掴み取るのは選手本人であることを伝えたかった。
  3. 自分が感じた気付きをアウトプットするクセを付けさせたかった。

ということがあります。

ほぼ似たようなことを感じ取ったとしても、自分の言葉で言わせるようにしました。

これから先、卓球を続ける限り、色々な人に卓球を教わると思います。

その時に、ただ教えられた通りにやるだけでなく、自分なりのフィーリングを持って欲しかったからです。

「学び方を学ぶ」

これが、私が最初に教えたいことです。

さて、3人が言い終わったところで、私は彼らに質問を投げ掛けます。

「ところで、ボールがラケットの真ん中に当たった時と端に当たった時では、手に伝わってくる感じが違わないか?」

彼らは、あっと言う顔をします。

既にそれを分かっていた選手もいれば、言われれ初めて気付いた選手もいます。

すかさず、

「今度はわざと真ん中に当てる、わざと端っこに当てるをやってみろ」

と言って、やらせます。

ホントだ、全然違う。

彼らはそんな表情をします。

「分かるか。この感覚がとても大切だ。これから先、沢山のボールを打つけど、常に今のは真ん中に当たった、端だったという感覚を持ち続けることだ」

と教えます。

私が最初に教えたい技術的な事は、この「打球感覚」なのです。

この後、場合によってはボール突きをもう一度やらせることもありますし、壁打ちや二人組になっての羽根つきをやらせることもあります。

特に、壁打ちはボール突きの次にやる感覚練習としては効果的です。

ノーバウンドで壁に向かって、ボールを連続して打つ練習です。

左に打てば左に返り、右に打てば右に返り、弱く打てば前に落ち、強く打てば強く跳ね返ってきます。

壁は、実に正直です。

しかし、上手にコントロールしてやると、自分の手元に跳ね返ってきます。

  • ラケット角度
  • 力加減
  • 力みをなくす

など、卓球に必要な基本的な要素がこの練習で全て体感できます。

先ほどのボール突きで、ラケットの真ん中に当てる練習をしました。

真ん中にあるのは、スイートスポットです。

このスイートスポットに当てないと、コントロールが難しくて続かないことも、壁打ちをやることによって分かるはずです。

ボール突きの次のステップとして、最適です。

さらに、壁打ち練習は「こちらが良い球を打てば良い球が返り、悪い球を打てば悪い球が返る」という卓球の深淵さも示唆しているのです。

たかが壁打ちですが、なかなか深い!(笑)

ボール突きと壁打ちは、練習場または自宅で毎日やる様にという宿題を出します。(彼らが実際にやるかどうかは不明ですが)

カットマンとして最初に何を教えるか

ここまでは、戦型を問わずに出来る感覚の練習でした。

ここから、いよいよカットマンの練習です。

ですが、ここでも私は彼らに質問します。

「なぜカットマンになろうと思ったのか。攻撃マンになろうとは思わなかったのか」

彼らは一様に口ごもります。

それはそうです。

初対面の見知らぬ大人に、いきなりこんなこと聞かれて、自分の意見をどうどうと言える中学生はまずいません。

それは私も分かっているのですが、あえてこの質問をするのです。

中には、コーチにカットマンになれと言われたからと答える選手もいます。(おいおい、主体性がなさすぎだぞ!)

皆と同じことをしてもつまらないと思ったからと、答える選手もいます。(いいぞ!その反骨精神が!)

ごく稀にですが、カットマンがいいと思ったからと答える選手がいます。(そう、その通り!いいじゃないの!)

しかし、きちんと答える選手はいません。

だから、はっきりと言ってあげるのです。

「そうだよ、カットマンはかっこいいんだよ!あれだけ攻撃マンに打たれても台から下がって何本も低いカットを送り最後に攻撃に結び付けて勝つのだ。簡単に出来る様にはならない。カットマンになるのはいばらの道だ。しかし、必ず出来るようになる。これから俺が君たちにカットを教える。かっこいいカットマンになろう!」

「カットマン=かっこいい」という、私のカットマン美学が多分に入っています。

しかし、私は本当にそう思っているのです。

こうして、彼らのモチベーションを上げます。

そうしなければ、苦しい割には成果の出ないカットの練習は続かないのです。

練習は、カットから入ります。

実戦で多く使うのはツッツキですが、彼らはカットプレーに憧れてカットマンを選んだはずですので、カットから始めます。

まずは、ワンコースで行います。

一本打ち、またはロングサービスを出してカットをさせます。

フォアから行うかバックから行うかは、特に決めていません。

彼らが、自分たちでどの程度カットを練習しているかによります。

出来れば、得意な方から始めると良いです。

小さな自信を沢山持たせるためです。

ロングカットの一番のポイントは、ボールの引き付けです。

手元までボールを引き付けて(溜めて)、打球することです。

初心者は、すぐに手を出してしまいがちです。

指導では「手元まで我慢しろ」とよく言います。

二番目のポイントは、体重移動です。

  • カットを切りながらボールを飛ばす
  • 身体全体でボールを運んでやる

などと言います。

やってみせて、やらせてみて、出来れば褒めるを繰り返します。(まるで山本五十六です)

ある程度カットが出来る様になったら、次にワンコースで続ける練習をします。

  • ロングサービスや1本打ちの時とはボールの回転が違うこと、
  • 従ってラケットのスイング方向がより垂直になること、
  • カット対ドライブのリズムの取り方

などを繰り返し指導します。

良いカットは褒め、手打ちは叱りつつ、10本続けることを目標に行ないます。

10本続けば、初心者としては上出来です。

彼らも、そんなに続いたことはないはずです。

この1回の練習で腕を上げたのだということを、彼らに確認・認識させます。

これも、小さな自信を沢山持たせるためです。

練習終わりの全体ミーティングでは、皆の前で彼らが頑張った事実を褒めます。

「○○は今日の練習で、カット対ドライブのラリーが○本続いた。自己新記録だ。今日一日でだいぶ上達した証拠だ。よく頑張った」

そうやって褒めた上で、再度宿題(ボール突きと壁打ち)を毎日やるようにと念を押します。

最初に教えたい「全体感」

この要領で、

  • フォアカット、バックカット
  • フォアツッツキ、バックツッツキ

は、全員が最低行いたいところです。

それぞれの技術に教えるためのコツがあるのですが、詳細な説明は今回は省きます。

先のカットの練習で、ただワンコースでラリーが続いたからと言って、喜んでばかりもいられません。

次に、この4つの基本技を使って、オールコートのフットワーク練習をします。

私の言う「全体感」とは、カットマンのプレー全体のイメージを指します。

1つ1つの技術は未熟でも構わないので、この全体感を掴むことが重要だと思います。

いきなり初心者に、そんなフットワークなんて無理だと思われるかも知れませんが、やれば出来るものです。

フットワーク練習もどきですが、そこはトレーナー(私)の腕の見せ所なのです。

コツは、選手の得意技を中心にやることです。

選手は、フォアカットとバックカットで、どちらかが得意でどちらかが不得意です。

仮に、バックカットが得意だとしましょう。

まずバックカットで3本だけラリーを続け、4本目を別のところ(例えばフォア側)へ送ります。

選手にとっては不得意なコースですので、最初はミスが出ると思います。

仮に入ってきたら(!)、すぐバックに送り得意のバックカットのラリーに戻します。

3本続いたら、4本目をまた別のところに送ります。

この様に、得意のコースでラリーを続け、それに不得意のコースを混ぜるというやり方をするのです。

足の動かし方は、その都度教えます。

バックカットからフォアカットへの切り替えであるならば、

  • バックカットの後に必ずニュートラルに戻るクセを付けること
  • しっかり足を切り替えてフォアカットの態勢を作ってからカットすること

などを、ラリーの合間に指導します。

この練習でずっと言い続けることは、「カットはリズムだ。常に膝でリズムを取るのだ」ということです。

トレーナーは、根気よく一定のボールを送る様に心掛けます。

選手が、少し頑張れば取れるくらいに調整します。

当然、選手のカットは乱れて飛んで来ます。

トレーナーこそ集中して足を動かし、一定のドライブボールを送ります。

まとめ

この記事は、2021年3月に書いています。

今後、カットマンのスタイルは攻撃寄りにシフトしていくはずです。

ですから、今回の記事の様に純粋にカットを教える機会も少なくなるのではないかと、私は予想しています。

しかし、カットマン自体は生き残るし、カットの基本は変わらないはずです。

この記事を書いた人OBUコーチ(小吹 真司)OBUコーチ(小吹 真司)
昭和40年12月31日生まれ。血液型O型。兵庫県西宮市出身。現在は静岡市在住。
中学1年より卓球を始め、卓球歴は40年以上。中学高校時代は鳴かず飛ばずの成績。高校時代は県大会前の地区予選3回戦ボーイであった。インハイなど全国大会出場経験無し。大学時代飛躍的に卓球技術が向上。東海学生卓球リーグ2部で全勝しチームの優勝に貢献し敢闘賞を受賞。3人の元インハイ出場の選手に勝つ。30代の時に東海選手権(年代別個人戦)で、ベスト8に入る。高島規郎選手、古川敏明を選手を師と仰ぐ。現在も現役選手として試合に参加している。静岡市卓球協会の常任理事として静岡市の一般の試合の大会運営や広報活動を行う。また中高生の指導に当たる事もある。2005年から卓球のメールマガジンを発行中。現在も続いている。著書「OBUさんの初心者卓球上達法~卓球が上手くなりたい人へ」(文芸社)
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