カットマンがカットをする時のコツとは??
初心者カットマンがカット打法を覚える時、
- どんなコツがあるのか
- どんなポイントに気を付けたら良いのか
を取り上げます。
カットマンの経験の長い選手が、もう一度、カット打法の基本を見直す時にも参考になると思います。
また、カットマンを指導する指導者も含め、多くの方の参考になれば幸いに思います。
打法の考え方
カットに限らず卓球の打法は、一度覚えたら一生使えるというものではないのです。
むしろ、時代と共に変えて行かなくてはならないものだと私は思います。
生き残るためには、頭を柔軟にして、最新のものを採り入れて行かなくてはなりません。
こう話すと、今流行しているものに安易に飛びつく印象があると思いますが、そうではありません。
- どんどん変えるべきもの
- 決して変えてはならないもの
の2つがあることを、認識すべきだと思います。
後者の代表的なものは、「卓球の基本」です。
どんなに時代が変わっても、打球時にラケットのスイートスポットに当てる重要性は変わりません。
また、どんなに用具が進化しようと、打球に体重が乗らないと生きたボールが飛んで行きません。
用具に頼るのも1つの方法ですが、同時にどうやったら体重が乗った良いボールが打てるかを追求すべきです。
そうしないと、伸びに限界があると私は思います。
カット打法はどうか
カット打法そのものは、私が卓球を始めた40年以上前から大きく変わってはいません。
一番大きく変わったのは、「打球点」です。
カット打法そのものが変わったと言うよりも、打球点が変わったのでそれに連れてカットの打ち方も変わったというのが現状です。
相手の打球は頂点を過ぎてから床に着くまで、
- 下降前期(4番)
- 下降中期(5番)
- 下降後期(6番)
の3段階に分けられます。
因みに
- バウンド直後を1番
- バウンド直後から頂点までを2番
- バウンドの頂点を3番
と呼んでいます。
私が卓球を始めた頃のカット打法は、5番または6番を捉えるのが良しとされていました。
身体で言うと、腰の位置か腰よりもやや低い位置でした。
また、たとえ10センチでも後方へボールを引き付ければ、それだけ打球の威力が落ち、カットがしやすくなると教わりました。
中には、6番よりもさらに床すれすれの打球点のカットマンもいて、守備範囲の広さと懐の広さを誇っていました。
- 球足は長く
- カットは深く
- 姿勢は低く
- ボールに潜り込む様にカットする
- 何本打っても返って来る
それが、当時の理想的なカットマンでした。
しかし、今現在は違います。
打球点は、4番の下降前期です。
身体で言うと、胸の位置か腰よりもやや高い位置です。
姿勢は高めで、上から切り下す様にカットのスイングをします。
どちらかと言うと、フォロースルーはコンパクトですぐに基本姿勢に戻ります。
全ては、すぐに攻撃出来る様にするためです。
昔は、カットするたびに腹筋を緩めていましたが、今は腹筋を緩めずに素早く動き技を連携させて行きます。
カット打法のコツ
カット打法のコツは、以下の4つです。
- 下回転をかけてボールを飛ばす感覚を覚える。
- ボールをよく引き付けて打球する。
- 上半身の力を抜き、相手の打球の勢いを逆に利用して打球する。
- 足をよく動かす。ひざでリズムを取る。
まず、1,下回転をかけてボールを飛ばす感覚を覚えるです。
以下のような練習方法で、感覚を覚えると良いでしょう。
- 2人ペアになって、3~4メートル離れて向かい合います。
- カットサービスの要領で相手の胸をめがけて下回転をかけてボールを飛ばします。
これを、ペアの相手と交互にやり合います。
あなたの打球はホップしながら飛んで行き、減衰してストンと落ちます。
これが、カットの軌道になります。
繰り返し飛ばして、コツを掴みましょう。
ちょうどストンと落ちたところで、相手の胸に届くようにコントロールします。
相手との距離を色々変えながら、自分の力加減も変えて行ってください。
カットを飛ばす感覚について、気付いた事をお互いに話し合いましょう。
次に、2,ボールをよく引き付けて打球するです。
カット習得の関門とも言えるのが、この「ボールの引き付け」です。
初心者カットマンは、我慢して引き付けることが出来ず、ボールを迎えに行ってしまう場合がよく見られます。
大切なのは、手元にボールが来るまで「待つ」ことなのです。
- 1本打ち
- 多球練習
- 軽ドライブでのラリー
など、カットを繰り返し練習する中で、この「引き付け」を意識して覚えましょう。
コーチは手本を見せるなどして、選手がよく引き付けられているかを指導してあげてください。
カットの打点は、前述したとおり4番の下降前期が基本なのですが、感覚を覚えるためにわざと5番や6番で打球するのも良い練習になります。
最後に、3,上半身の力を抜き、相手の打球の勢いを逆に利用して打球すると、4,足をよく動かす。ひざでリズムを取る。
ですが、これらは別々にやるよりも、同時に練習してしまった方が覚えやすいです。
上半身と下半身は連動しているからです。
まず上半身の方ですが、肩の力と腕の力をとにかく抜くことです。
ラケットを振り上げる時、インパクトの時のみ力を入れます。
ラケットを握っているので落とさない程度に力を入れますが、そのほかは出来るだけ力を抜くことです。
「ラケットの重みを感じながら下に落とす」というイメージで、スイングをします。
こうすることで、相手の打球の勢いを利用出来るようになります。
「柔らかく受け止めて転がしながら投げる」のが、上手なカットです。
この感覚を、元日本代表の羽佳純子さんは、「ボールとケンカしない」と表現しています。(上手い表現です!)
次に下半身ですが、ひざを柔らかく使ってリズムを取る事です。
塩野真人選手や佐藤瞳選手の動画では、ワンコースのカットでさえ、ものすごく足を動かしている様子が分かります。
いきなりこのレベルは敷居が高いので、そこまででなくても足を動かす意識はとても大切です。
カットは足でするのです。
(よく覚えておきましょう!)
不調になった時は、多くの場合、足が止まっている時です。
- 基本姿勢→カットのスタンス→基本姿勢
を繰り返します。
タイミング(リズム)は、
- イチッ(相手コート)
- ニッ(自領コート)
- サーン(カットの打球)
です。
※ロングサービスに対するカットの場合
以上、4つのコツを再チェックすると、カットの「全体感」が良くなります。
大切な「全体感」
「全体感」というのは、私の造語です。
カットプレー全体のイメージを、指します。
カットだけでなく、ツッツキやフットワークも含めた全体のカットプレーのことです。
これがリズミカルに出来るようになることが、とても大切なのです。
多くの卓球指導者は1つ1つの技を覚えさせ、それを足し算の様により集めて、全体のプレーを覚えさせようとします。
このアプローチはこれで良いのですが、別のアプローチがあることを是非知っておいて欲しいのです。
それは、1つ1つの技術が未熟でも、先に全体のプレーを覚えさせてしまうやり方です。
カットマンのカットプレーの様に、リズミカルに大きく動くことを覚えるには、こちらの方が良かったりするのです。
その後に、もう一度個々の技術の習得に戻ると、あれほど出来なかったことが自然に出来るようになっていたりします。
具体的には、
- カットとツッツキの前後のフットワーク
- フォアカットとバックカットの切り替え
- ツッツキのフォアとバックの切り替え
- カットからの反撃
を同時にやることです。
これらの要素が入ったパターンを決めて、動きを伴ったカットの練習をすることです。
当然、最初は続かずにミスが出ます。
指導者は球を複数個持って置き、間髪を入れずミスの続きからラリーを継続します。
こうやって、「全体感」を習得するのです。
ミスが多い技術が未熟な点ですから、この練習とは別にその技術だけを取り出して集中して練習します。
そして、また「全体感」の練習に戻ります。
これらを繰り返していくと、俄然カットプレーが良くなってきます。
1球で続くようになれば、しめたもの。
指導者は、選手を褒めてあげてください。
パターンはそれこそ無限にあるのですが、まずは基本のパターンで続けられるように練習します。
ある程度基本のパターンを習得したら、試合でよく使うパターンを練習します。
一番多いのが、前に寄せられてから速攻強打されるパターンです。
(前後のフットワークですね)
その練習の中で、
- 打球点の高いカット
- ミドルのカット
- 前陣ブロック(カウンター攻撃)
を覚えていきます。
全体感を覚えて個別の技術に戻り、また全体感のレベルを上げて行きます。
カットは一日にして成らず
カットを習得するのには、恐ろしく時間がかかり、根気が必要です。
しかし、コツコツ努力を続けていくと、観客を魅了するようなとても素晴らしいカットプレーが出来るようになります。
今日出来たプレーが、明日できるとは限りません。
だから、何回も繰り返し練習を行うのです。
何回も何回も繰り返しやっているうちに、
- 「下回転をかけてボールを飛ばす感覚」とはこういう感覚のことか?
- 「ボールをよく引き付けて打球する」とは、ひょっとして今のカットのことかも
- 「相手の打球の勢いを利用して打球する」とは、こんな感じかな・・・
- 「カットは足でする」の意味が少し分かってきた・・・
という様に、少しずつ分かってくるものです。
それが、カットをする時のコツなのです。
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昭和40年12月31日生まれ。血液型O型。兵庫県西宮市出身。現在は静岡市在住。
中学1年より卓球を始め、卓球歴は40年以上。中学高校時代は鳴かず飛ばずの成績。高校時代は県大会前の地区予選3回戦ボーイであった。インハイなど全国大会出場経験無し。大学時代飛躍的に卓球技術が向上。東海学生卓球リーグ2部で全勝しチームの優勝に貢献し敢闘賞を受賞。3人の元インハイ出場の選手に勝つ。30代の時に東海選手権(年代別個人戦)で、ベスト8に入る。高島規郎選手、古川敏明を選手を師と仰ぐ。現在も現役選手として試合に参加している。静岡市卓球協会の常任理事として静岡市の一般の試合の大会運営や広報活動を行う。また中高生の指導に当たる事もある。2005年から卓球のメールマガジンを発行中。現在も続いている。著書「OBUさんの初心者卓球上達法~卓球が上手くなりたい人へ」(文芸社)