【OBUコーチ】カットマンにとって苦手な戦型とは
どんな戦型にも「嫌な相手」がいます。
こういう相手とは対戦したくない!
そんな相手がいるものです。
いわゆる「天敵」という存在です。
カットマンにもそういう存在がいて、「カットマンキラー」とか「カット殺し」とか物騒な?名前で呼ばれています。
カットマンにとって、苦手な戦型とは何か。
今回は、そこをテーマに掘り下げます。
戦型という分類
このテーマを考える時に、まず思ったのは、戦型という分類が現代にマッチしているか?という事でした。
私が卓球を始めた40年前は、
- ドライブ型
- 前陣攻守型
- 守備型
と分類され、さらに
- 変化型
が後に付け加えられました。
- ドライブ型は、ペンで台から下がって打点を落としたドライブを多用する選手を指しました。
- 前陣攻守型は、ペン表ソフトで前陣で戦う選手のことを指しました。
- 守備型は、カットマンとも呼ばれ、今のように攻撃はせずに粘りを身上とするプレースタイルの選手を指しました。
- 変化型は、粒高ラバーやアンチスピンを使って相手を翻弄するタイプの選手を主に指しました。
いずれのタイプを考えた場合も、上記の分類は、現代の卓球を考えた場合、全く当てはまらないと思います。
現代の卓球の戦型の分類
では、現代の卓球の戦型を分類してみましょう。
中陣に下がって戦う選手は、もういません。
前陣で両ハンドを振るのは、当り前になりました。
違いがあるとすれば、
- どちらかと言うとフォアハンドを多く使ってくるか、フォアとバックをほぼ均等に使ってくるか
- 使用している用具
- よく使う技術
くらいでしょうか。
馬龍選手や許シン選手、女子では丁寧選手がフォアハンドをやや多く使い、最後はフォアハンドで勝負してくる選手です。
樊振東選手や張本選手、女子では陳夢選手がフォアとバックを、ほぼ均等に(場合によってはバックをより多く)使う選手です。
スウェーデンのファルク選手、日本の伊藤美誠選手は片面に表ソフトを貼り、ドライブよりもスマッシュを多用します。
佐藤瞳選手やドイツのハン・イン選手、韓国の徐孝元選手はカットマンです。
その他の選手として、元中国で今はルクセンブルク代表の倪夏蓮選手の様な粒高の選手がいます。
以上を分類して、
- 前陣両ハンドドライブ型(フォアハンド偏重タイプあり)
※馬龍選手、樊振東選手、張本智和選手 - 前陣速攻+変化型
※伊藤美誠選手、ファルク選手 - カット+攻撃型
※佐藤瞳選手、ハン・イン選手 - 変則型
※倪夏蓮選手
になるかと思います。
カットマンにとって苦手な戦型
カットマンにとって最も苦手な戦型とは、2.前陣速攻+変化型です。
速さだけ、又は変化だけの相手ならば、カットマンは何とか対応出来ます。
しかし、両方を持っていると、カットマンとしては非常に苦しいです。
先のワールドカップ2020で、ドイツのカットマン、ハン・イン選手がベスト4に入りました。
準決勝で優勝した陳夢選手に3-4と、かなり善戦しました。
しかし3位決定戦では、伊藤美誠選手になすすべなく0-4で敗れました。
ハン・イン選手の良さが発揮されず、伊藤選手独特の速攻+変化について行けない形でした。
あくまで傾向ですが、カットマンは、1.前陣両ハンドドライブ型に強く、2.前陣速攻+変化型に弱いのです。
その理由は明確で、いつも練習しているのが1.のタイプだからです。
そして世界的に見ても、1.のタイプが圧倒的に数が多いからです。
そうなると練習相手を探す上でも、攻撃マン対策を立てる上でも、1.のタイプに絞らざるを得ません。
ましてや伊藤美誠選手は、世界に同じタイプの選手がいません。
対策の立てようがない、希少な戦型です。
ハン・イン選手が負けてしまったのも、無理のない話です。
「やり慣れていない」という理由からすると、3.カット+攻撃型や、4.変則型も、カットマンにとって苦手な戦型です。
3.と4.は、自ら攻撃することは少なく、相手のボールを利用して変化するタイプです。
しかも、クセ球を送って相手の攻撃ミスを誘います。
カットマンとしては、攻撃していくと逆にハマるケースが多いので、必然的に守り合いの様な試合展開になります。
そういう我慢比べをベースとして、
- どちらが守備力が上か
- どちらが相手の守備を打ち抜く攻撃力があるか
の勝負になります。
カットマンにとっては、あまり対戦したくない戦型です。
現代カットマンの目指すところ
プラスチックボールになり、攻撃型はより前陣で戦う様に進化しています。
カットマンも進化しなくてはなりません。
強い回転に負けないカットを磨きつつ、より前陣で、より攻撃的になる必要がカットマンにはあります。
両ハンドドライブ+カットという、T.T彩たまの英田理志選手の様なプレーも1つのやり方です。
英田選手ほどの攻撃力とまで行かなくても、フォアでもバックでも前陣での攻撃力がカットマンにも必要になって来るでしょう。
それをカットプレーとどう結びつけるかが、各カットマンの課題と言えます。
昭和40年12月31日生まれ。血液型O型。兵庫県西宮市出身。現在は静岡市在住。
中学1年より卓球を始め、卓球歴は40年以上。中学高校時代は鳴かず飛ばずの成績。高校時代は県大会前の地区予選3回戦ボーイであった。インハイなど全国大会出場経験無し。大学時代飛躍的に卓球技術が向上。東海学生卓球リーグ2部で全勝しチームの優勝に貢献し敢闘賞を受賞。3人の元インハイ出場の選手に勝つ。30代の時に東海選手権(年代別個人戦)で、ベスト8に入る。高島規郎選手、古川敏明を選手を師と仰ぐ。現在も現役選手として試合に参加している。静岡市卓球協会の常任理事として静岡市の一般の試合の大会運営や広報活動を行う。また中高生の指導に当たる事もある。2005年から卓球のメールマガジンを発行中。現在も続いている。著書「OBUさんの初心者卓球上達法~卓球が上手くなりたい人へ」(文芸社)