【OBUコーチ】カットマンの弱点とは
攻撃マンがあまり対戦したくないと思う戦型に、「カットマン」があります。
- こちらがいくら攻撃を仕掛けてもカットで粘ってくる
- 打ちあぐむと反撃をしてくる
- カットの変化も分かりづらい
カットマンに苦杯を喫した攻撃マンは、意外に多いはずです。
しかし、鉄壁に思えるカットマンの守備にも、実は弱点があります。
カットマンと戦う時には、この弱点を攻めることが重要です。
相手の得意なところと戦っても、こちらが疲労するだけですから。(笑)
カットマン歴40年以上の私OBUが、カットマンの弱点をさらけ出します。(本当はバラしたくないのですが。笑)
前後の動きに弱い
カットマンは、前後の動きに弱いのです。
カット打ちの時に、ストップとドライブを混ぜると、カットマンはだんだん守備が崩れてきます。
ストップの後に速攻をかけると、相手は非常に苦しいはずです。
打つ真似をしてダブルストップするのも、非常に効果があります。
こうして、前後にカットマンを動かします。
相手の体力を奪うには、良い戦術です。
得点につながらなくても、相手を疲労させることが出来ます。
特にカットマンを斜めに動かしましょう。
- フォア前とバックカット
- バック前とフォアカット
カットマンは、クロスで待つことが多いです。
ですので、前後に動かしながら、何本目かにストレートコースへ打つと効果的です。
注意すべき点)
- 経験の少ないカットマンに対しては、上記の攻め方で充分通用します。
- よく鍛えられたカットマンは、自分の弱点を知り練習で補強してくるのであなたの攻め方が相手の練習の範囲内だとすると、逆に相手の調子を上げることに繋がります。
相手の力量と自分の力量を冷静に判断する必要があります。 - 一本調子になると相手も調子づきます。
実はストップとドライブを1本ずつ送るのは、相手にとってやり易い攻撃です。
そういう練習をしてきているからです。
こちらの攻撃のリズムを絶えず変化させ相手をリズムに乗せない様にしましょう。
ミドルが弱い
カットマンは、ミドルが弱いです。
カットの練習として、
- フォアカット
- バックカット
はよくやります。
しかし、ミドルカットを練習するカットマンは実は少ないです。
カットマンはやることが沢山あって、ミドルカットの練習にあまり時間が割けないのが現状なのです。(だから共通して弱い)
ミドルには
- フォアミドル
- バックミドル
の2種類がありますが、要は右わき腹付近です。
前後に動かしながら不意にミドルを突くと、とても効果的です。
- 相手がフォアで処理すればフォアサイド
- バックで処理すればバックサイド
が大きく空きますので、そのオープニングを狙います。
相手は苦しい体勢でミドル処理をした直後に、大きく動いてカットしなくてはならず、負担が大きいのです。
注意すべき点)
- ミドルカットはクセ球が多いです。
- フォアならば「デスカット」と呼ばれるブチ切れカットが来る可能性があります。
- バックならばナックルカットやカーブするカットが来る可能性があります。
- ミドルを攻めた後の次のカットは深追いせず慎重に見極めた方が良いです。
- もちろん見切れている時は、積極的にオープニングを狙って攻めます。
実はそんなに攻撃は上手くない
攻撃主体のカットマンを除き、カットマンは実はそんなに攻撃は上手ではないのです。
練習時間の多くをカットの練習に充てるので、攻撃の練習は限られます。
カットマンをツッツキの多い攻撃型だと捉えると、攻撃のレベルは低いです。
では何故、カットマンの攻撃が効くのか。
それは、カットプレーの中に、攻撃を混ぜてくるからです。
こちらがカット打ちをして攻撃に専念し、守備への意識が薄れているところに攻撃されるからです。
攻撃球そのものは、攻撃型のそれと比べて威力は落ちるのが普通です。
冷静に対処すれば、必ずブロック出来ます。
注意すべき点)
- 最近は攻撃型と同じ弾むラバーを使用するカットマンが多くなりました。
これにより 攻撃球も攻撃型と同じくらい威力が出ます。 - しかしカットマンの攻撃には必ずと言って良いほど「攻撃パターン」があります。
チャンスを作って攻撃するという一種のクセがあるからです。
その攻撃パターンを読み、外してやれば良いのです。 - 例えばナックルカットの後のストップを狙い打つのが上手いカットマンに対してはストップするのではなく、わざと長いツッツキを送ります。
ネット際のストップを狙い打たれると攻撃マンとしては苦しいですが、エンドライン寄りから打たれても距離が長いのでボールの威力は減衰し、対処しやすいです。 - 例えば粒高ラバーでプッシュしてチャンスを作って次球を回り込んで打つのが上手いカットマンに対しては、プッシュされたボールをフォアサイドに送ります。
相手は打ってきますが、バックサイドとフォアサイドでは、フォアサイドから打つ方が若干威力が落ちます。
また、プッシュされたボールをツッツキで返球するから相手に打たれるワケで、プッシュされるのを待ってドライブで返せば相手のパターンを崩すことになり、逆にこちらのチャンスになります。
ナックルに弱い
カットマンは、ナックル性のボールに弱いです。
普段、ドライブ性のボールばかりカットしているからです。
ナックル性のスピードロングサービスは、カットマンに効きます。
ネットミスをします。
ドライブ性と混ぜて使うとより効果的です。
ナックルドライブをバック面(異質面)に送ると、上手くカット出来ないカットマンが多いです。
ナックル性で最も攻撃力のあるのは、スマッシュです。
少し浮いたツッツキやカットをスマッシュできるようになると、カットマンに対してとても有利です。
伊藤美誠選手がカットマンに強いのは、このスマッシュが打てるからです。
彼女の場合、
- サービス
- レシーブ
- ツッツキ
など、ラリーそのものが速く、相手のカットマンに時間的余裕を与えません。
さらに、表ソフトを駆使した回転の変化もそれに加わるから、カットマンとしては非常にやりづらくなります。
是非、少し浮いた下回転系のボールを、スマッシュ出来る技術を身につけましょう。
注意すべき点)
- こちらがスマッシュしたボールをカットで返球された場合、ほとんどがナックルです。
スマッシュのボールの勢いを利用して返球しているだけだからです。 - ですので、スマッシュを仮にカットで返球された場合は頂点を捉えて相手のミドルへスマッシュを打ち込みましょう。
- 但し、深追いは禁物です。
回転の変化に弱い
カットマンは、回転の変化に弱いのです。
先のナックル性のスピードロングサービスとドライブ性のスピードロングサービスを混ぜると、とても効きます。
異質面(特に粒高ラバー)は、この傾向が強いので狙い目です。
相手の異質面での回転対応力の幅がありますが、それを超えてやると効果てきめんです。
ドライブに対してはオーバーし、ナックルに対してはネットミスします。
角度が狂って甘くなったカットレシーブは、3球目強打のチャンスです。
サービスだけでなく、カット打ちドライブでも同様のことが言えます。
ナックル性のカット打ちを混ぜると、カットにネットミスが出ます。
調整してきたところに、ドライブを入れるとオーバーミス又はカットが浮いてきますので、それを狙ってスマッシュします。
注意すべき点)
- ナックル性のカット打ちは高さに注意が必要です。
- 高いボールを送ってしまうと反撃される危険性があります。
- 相手に踏み込まれて打たれるので、決められる確率が高いです。
ループに弱い
カットマンは、ループドライブに弱いです。
伸びるドライブで相手を台から下げさせたところに、ループドライブで前に落とすとカットマンは取れません。
カットが浮いてくることが多いです。
またはオーバーミスをします。
前へ出ながらラケット角度を抑えるのは、難しい技術だからです。
カットマンには、「カットで前後に動く」という意識はあまりありません。
ですので、カット打ちのボールで、カットマンを前後に動かすのはとても有効です。
注意すべき点)
- 前に落とすループを狙っているカットマンもいます。
わざと台の下まで打球点を落として、こちらが見えない所で変化カットをするケースがあります。 - ナックルカットにしたり、少しドライブの掛かったボールにして返してくる場合もあります。
カットマンと戦う時には
カットマンと戦う時には、前述のカットマンの弱点を攻めることになります。
もう一度復習すると、
- カットマンは前後の動きに弱い
- カットマンはミドルが弱い
- カットマンはそんなに攻撃は上手くない
- カットマンはナックル性のボールに弱い
- カットマンは回転の変化に弱い
- カットマンはループドライブに弱い
となります。
各項目に、「注意すべき点」を付けました。
その心は、この攻め方には必ずリスクが伴うということです。
カットマンは自分の弱点を知っていて、練習で強化してきます。
あなたの攻撃を読んで、それを利用してくるかも知れないのです。
上手なカットマンほど、したたかで、自分からは変化せずに相手の変化に乗じて変化してくるのです。
ですので、カットマンを攻めている時も、決して油断せずにどの程度効いているのかを自分で確認しながらやる必要があります。
カット攻略のヒント
それは、「カットマンにはクセがある」と知り、そのクセを見抜くことです。
どんなカットマンも、必ずウィークポイントがあります。
完璧に見えるカットマンにも、どこかに穴があるものなのです。
こんな話があります。
ミスターカットマンの高島規郎さんが、近大付属高校時代の話です。
当時から高島選手のカットは鉄壁で、カット対ドライブのラリー勝負になると、誰も高島選手に勝てませんでした。
打倒高島に執念を燃やす、ライバル校である興国高校の故田中拓監督は、高島選手を徹底的に研究し、ある弱点を見つけます。
それは、ほんの僅かではあるがフォアカットの方がバックカットよりもミスが多い、というものでした。
自分の選手に、高島選手のフォアに徹底的にボールを集めさせ、ついに高島選手に粘り勝ったのです。
現代では、カットマンは攻撃マン化して、昔の様なカット対ドライブの我慢比べの様な試合は見られなくなりました。
しかしながら、カットを打つ場面は依然としてあるわけで、相手カットマンの弱点を研究することは大切です。
こちらのボールに対して、ある一定の方法でしか返球する事が出来ない、というのも、充分ウィークポイントになり得るのです。
昭和40年12月31日生まれ。血液型O型。兵庫県西宮市出身。現在は静岡市在住。
中学1年より卓球を始め、卓球歴は40年以上。中学高校時代は鳴かず飛ばずの成績。高校時代は県大会前の地区予選3回戦ボーイであった。インハイなど全国大会出場経験無し。大学時代飛躍的に卓球技術が向上。東海学生卓球リーグ2部で全勝しチームの優勝に貢献し敢闘賞を受賞。3人の元インハイ出場の選手に勝つ。30代の時に東海選手権(年代別個人戦)で、ベスト8に入る。高島規郎選手、古川敏明を選手を師と仰ぐ。現在も現役選手として試合に参加している。静岡市卓球協会の常任理事として静岡市の一般の試合の大会運営や広報活動を行う。また中高生の指導に当たる事もある。2005年から卓球のメールマガジンを発行中。現在も続いている。著書「OBUさんの初心者卓球上達法~卓球が上手くなりたい人へ」(文芸社)