【OBUコーチ】英田選手から考えるシン・カットマンとは?
カットマンは、今まさに転換期に来ています。
カット主戦型は、残念ながら今後ますます勝ちにくくなるでしょう。
カットマンを40年以上やってきて、私はそれを痛感しています。
生き残る道は、「シン・カットマン」に近づくことです。
「シン・カットマン」とは何か。
私の考えをお話します。
勝ちにくくなった背景
カットマンが勝ちにくくなった背景は、以下の3点です。
- プラスチックボールへの移行
- 11本制・サービス2本交代の導入
- 弾む用具の飛躍的進化
1.のプラスチックボールへの移行は、カットマンに多大な影響を与えました。
以前に比べて、カットが切れなくなりました。
特に、粒高ラバーや表ソフトラバーでカットしても、回転が掛かりにくくなりました。
ボール表面にディンプル加工がされていないので、つるつるで摩擦が少ないのです。
通常はバック面に異質ラバーが貼ってあるのですが、そのバックカットを攻撃マンが狙い打つケースが非常に増えました。
2.の11本制・サービス2本交代の導入により、試合は全て短期決戦になりました。
カットマンも、例外ではありません。
対戦相手の攻撃が未熟であれば従来のカットで粘る戦術でも勝負になりますが、そうでなければ相手の攻撃に慣れようとしている間に、勝負の大勢が決してしまいます。
どうしても、カット技術は相手の攻撃を受けてそこから盛り返していくため、短期決戦には向かないのです。
3.の弾む用具の飛躍的進化は説明するまでもなく、プラスチックボールに対して、攻撃力をアップさせるものでした。
カットマンの用具も、カットと攻撃兼用の性質を持つものが開発されていますが、攻撃型優位であることは変わりありません。
カットマンの分類
現代のカットマンを分類すると、私の考えでは3つに分かれると思います。
- 守備型カットマン
- 攻撃型カットマン
- 超・攻撃型カットマン
1.の守備型カットマンは従来型のカットマンのことで、カット中心にプレーをして相手がカットを打ちあぐんだところに反撃をするタイプを指します。
2.の攻撃型カットマンは1.のタイプよりも攻撃的で、カットのラリーの中に積極的にロングボールを入れて攻撃に転ずるタイプを指します。
3球目攻撃も仕掛けます。
3.の超・攻撃型カットマンは、そもそもあまりカットをしません。
サービス3球目、レシーブ4球目で得点します。
攻撃とカットの比率は、7:3くらいのタイプを指します。
それぞれのタイプで一長一短があり、どれが良くてどれが悪いというワケではありません。
ただ先の理由で、1.のタイプはレベルが上がるにつれて勝ちにくく、1.よりも2.、2.よりも3.のタイプが現在では勝ち易くなってきています。
衝撃的だった全日本選手権
2021年1月に行なわれた卓球全日本選手権の男子シングルスで、カットマンでベスト16に入ったのは2名だけでした。
1人はベスト16に入った御内健太郎選手。
もう1人はベスト8に入った英田理志選手。
御内選手は、バック面に異質ラバーを貼った攻撃型カットマンです。
張本智和選手と大接戦の末敗れ、ベスト8入りを逃しました。
張本選手は、この試合に勝ったものの体力を激しく消耗し、翌日の準々決勝の及川瑞基選手との一戦では精彩を欠きました。
それほど御内選手のカットを打ち抜くのは、大変だったのだと分かります。
カットだけを採れば、御内選手は現時点で日本一でしょう。
しかし、仮に張本選手に勝ったとして、御内選手はどこまで勝ち上がれたでしょうか。
張本選手が体力を消耗したのと同じように、御内選手もかなりダメージが残ったのではないでしょうか。
人一倍修練を積み、超人的な体力の持ち主であることは、御内選手のプレーから簡単に想像出来ました。
しかし、これ以上勝つのは難しいのではないかと私は感じてしまいました。
それが、私にとって衝撃的だったのです。
一方、英田選手は両面裏ソフトの超・攻撃型カットマンです。
独創的な両ハンド攻撃を駆使し、見事ベスト8入りを果たしました。
英田選手は、ほとんどカットをしません。
そして、カットをしてもすぐに反撃します。
1.や2.のタイプのカットマンが、まずカットのラリーから入るのに対して、英田選手は攻撃から入る様に見えます。
準優勝した森薗政崇選手に敗れはしたものの、やりようによっては次回は勝てるのではないかと思わせる、伸びしろを感じました。
英田選手も超人的な体力の持ち主だと思いますが、準々決勝を終えてもまだ余力があるように見えました。
英田選手の特徴は、バックドライブと相手の心理を読む力(インサイドワーク)だと私は思います。
実際に、2021年度のTリーグで大活躍し、水谷隼選手や張本智和選手、戸上隼輔選手など有名な選手を次々と倒しています。
シン・カットマンとは
英田選手の様な「超・攻撃型カットマン」を「シン・カットマン」と私は名付けたいです。
3.を中心に戦い、相手によっては2.や1.の戦い方も自由に変えられるのが理想です。
ミスターカットマンと呼ばれる高島規郎先生の著書「卓球戦術ノート」には、現代のカットマンの戦い方が書かれています。
<第6章>の「新しい時代の戦術論」には、「カットマンは打って得点しろ」とあります。
得点するための手段として3種の神器があり、カット主体は最終手段であると言うのです。
3種の神器とは、
- サービス・レシーブ、台上ネットプレー
- 1本目の変化カット
- アタック
です。(詳しくは著書をお読みください)
そう言えば英田選手のベンチコーチには、高島先生が入っていました。
英田選手本人の努力の上に高島先生の戦術が加われば、ベスト8入りも当然の結果だったのかも知れません。
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昭和40年12月31日生まれ。血液型O型。兵庫県西宮市出身。現在は静岡市在住。
中学1年より卓球を始め、卓球歴は40年以上。中学高校時代は鳴かず飛ばずの成績。高校時代は県大会前の地区予選3回戦ボーイであった。インハイなど全国大会出場経験無し。大学時代飛躍的に卓球技術が向上。東海学生卓球リーグ2部で全勝しチームの優勝に貢献し敢闘賞を受賞。3人の元インハイ出場の選手に勝つ。30代の時に東海選手権(年代別個人戦)で、ベスト8に入る。高島規郎選手、古川敏明を選手を師と仰ぐ。現在も現役選手として試合に参加している。静岡市卓球協会の常任理事として静岡市の一般の試合の大会運営や広報活動を行う。また中高生の指導に当たる事もある。2005年から卓球のメールマガジンを発行中。現在も続いている。著書「OBUさんの初心者卓球上達法~卓球が上手くなりたい人へ」(文芸社)