【OBUコーチ】卓球に運動神経は必要なのか?
温泉卓球に代表されるように、卓球にはレクリエーションの印象があるようです。
そのためか、誰でも簡単に出来てしまうスポーツだと思われがちです。
確かに野球やサッカーの様に、特別に足が速くなくても、肩が強くなくても卓球はプレーできます。
でも、本当に卓球に運動神経は、必要ないのでしょうか?
イマドキの中学卓球部の事情
切り口として、今現在の一般的な公立中学の卓球部の事情から探ると良いと思います。
これは、私の友人のAMEさんから聞いた話です。
AMEさんは、ある中学卓球部の外部コーチをしていました。
私もそのお手伝いとして練習に参加し、生徒を教えたことがあります。
私たちが住んでいる静岡市は、サッカーと野球が盛んで、運動の出来る少年は、ほとんどがその2つのどちらかを選びます。
卓球部を選ぶ中学生は、小学生の時にあまり運動をしてこなかった子供が多いそうです。
ゲームばかりやっていて外で遊ばないため、野球のキャッチボールさえやったことがない子供も中にはいるそうです。
オーバースローでボールが投げれない子供もいて愕然とした、とAMEさんは言ってました。
私たちが子供の頃に、遊びを通じて当り前の様に培ってきた、運動能力の基礎がないのです。
学校によっては、全員が何らかの運動部に入らないといけない決まりがあるようです。
運動をやってこなかった、あるいは全くやっていない子供たちの受け皿的存在が、イマドキの卓球部のようです。
「しょうがない、卓球部にでも入るか」
そう思って入部する子が、多いそうです。
しかも、ゲームの影響でしょうか。
すでに近視の子供が多いのも、イマドキの卓球部員の特徴なようです。
静岡市卓球協会への登録人数のうち、中学生の占める割合は高く、少子化の影響も受けず微増しているという事実があります。
協会役員の私としては、それは大変有難いことなのですが、実際は消去法的に入部した子供が多いのは残念なことであります。
AMEさんの話では、それでも中には純粋に卓球に興味があり上手くなりたいと思っている子供もいるので、その子たちのやる気を大切に育てたいとのことです。
私もその考えには全く同感です。
親が熱心で、小学生の頃から卓球のスポーツ少年団に入って、卓球の練習を積んできた子が入部することもあります。
中学から卓球を始めた上級生よりもその子の方が卓球が強く、団体戦のメンバーを組む時など難しいこともあります。
部活を通じて他者との違いを認識したり、その中でやっていく社会性を身に付けるは、いつの時代も同じです。
しかし、現在ほど以下の様な「2極化」が進んでいる時代はないという気がします。
- すでに卓球の指導を受けてきているか中学から初めて卓球をやるのか
- 運動の基礎能力があるか、ないか
- そもそも卓球にやる気があるか、ないか
スタートの段階でこれだけ違うと、部活の顧問の先生や外部コーチは、指導するのにかなりやりにくいと思います。
現場の指導者の皆さんの苦労は、私のような立場のものでも想像に難くなく、本当に頭が下がる思いです。
運動の基礎能力
前述のように、私は外部コーチの手伝いをする程度ですが、中学生初心者の指導の経験があります。
その立場から言わせてもらうと、運動の基礎能力はあった方が良いです。
これがないと、卓球の指導以前の問題として基礎能力から鍛えなくてはならないので、時間がかかります。
いや、かかり過ぎます。
それだけ卓球の上達のスピードも遅くなり、本人のやる気の継続が難しくなります。
運動の基礎能力などと言うと小難しく聞こえますが、遊びの中で充分鍛えられるものです。
例えば、小学生がよくやるドッジボール。
この中には、色々な要素が入っています。
- ボール投げる(オーバースロー)
- ボールを受け止める
- ボールをパスする(味方に取り易い様に)
- パスの相手と方向を瞬時に判断する
- ボールを当てる(相手に取りにくい様に)
- 相手との駆け引き
- 前へ走る
- 後ろ向きに走る
- 身体を反転する
- 自分に向かってボールが来た時、受け止めるのか逃げるのかを瞬時に判断
- ボールの逃げ方を瞬時に決める(避ける、伏せる、ジャンプなど)
- 仲間との協力
などです。
※数えれば、もっとあるかも知れません。
- 相手を見て判断する
- その場の状況で判断する
などは、卓球にも活きる力です。
ドッジボール以外にも、遊びは沢山あります。
子供の頃に屋外で沢山遊ぶことで、運動の基礎能力は自然と身に付きます。
塾や習い事で忙しいのは分かるのですが、もっと遊べると良いのに、と思います。
小学生の基礎体力の平均が下がっているというニュースを聞くと、私は暗澹たる気持ちになります。
卓球に運動神経は必要なのか?
では。卓球に運動神経が必要なのでしょうか?
もしくは、必要ないのでしょうか?
私の結論は、YESであり、NOでもあります。
運動の基礎能力は、絶対あった方が良いです。
しかし、ずば抜けた運動神経が必要かと言うとそうでもありません。
もちろん、あるに越したことはありません。
それよりも、むしろ卓球は反復練習ですから、きちんとした指導の下で訓練を積めば、誰でもある程度までは必ず上達します。
だから、もし「私は運動神経が鈍いから」と思っている人がいれば、そんなことは関係ないよと勇気付けてあげてください。
正しい努力を・数年間にわたり・方向性を間違わず・質を保ちながら継続することの方が、もっと重要なことです。
選手本人が元から持っているものは、それほど大きくは影響しないのではないでしょうか。
私はそう思います。
昭和40年12月31日生まれ。血液型O型。兵庫県西宮市出身。現在は静岡市在住。
中学1年より卓球を始め、卓球歴は40年以上。中学高校時代は鳴かず飛ばずの成績。高校時代は県大会前の地区予選3回戦ボーイであった。インハイなど全国大会出場経験無し。大学時代飛躍的に卓球技術が向上。東海学生卓球リーグ2部で全勝しチームの優勝に貢献し敢闘賞を受賞。3人の元インハイ出場の選手に勝つ。30代の時に東海選手権(年代別個人戦)で、ベスト8に入る。高島規郎選手、古川敏明を選手を師と仰ぐ。現在も現役選手として試合に参加している。静岡市卓球協会の常任理事として静岡市の一般の試合の大会運営や広報活動を行う。また中高生の指導に当たる事もある。2005年から卓球のメールマガジンを発行中。現在も続いている。著書「OBUさんの初心者卓球上達法~卓球が上手くなりたい人へ」(文芸社)