陳夢選手対張本美和選手
世界選手権女子団体戦、決勝はラストの陳夢選手対張本美和選手までもつれ込みました。
結果は3-1で陳夢選手が勝つのですが、ご存知の通り、どっちに転ぶか分からない大激戦でした。
張本選手も充分に勝つ要素がありました。
それを、気力と思い切った戦術で上回った陳夢選手および中国ベンチ。
敵ながら天晴でした。悔しいけど。
日本としては、あともう一歩まで迫った打倒中国が果たせなかったという、非常に悔しい敗戦となりました。
手に汗握る試合内容でしたが、試合として学ぶ点が多くありました。
今号では試合を振り返りつつ、学ぶべき点を挙げて行きます。
このメルマガを読んだ後に、是非Youtubeで公開されている動画を見返して頂きたいと思います。
試合の序盤
1ゲーム目は張本選手の良い所ばかりが目立ちました。
陳夢選手相手にラリー戦で打ち負けずに互角以上に打ち合っていました。
打点の速さ、ボールの威力だけでなくコース取りが良かった様に思います。
特にバックハンドでのストレート攻撃や、フォアサイドから陳夢選手にドライブを打たせてクロスに返って来たところを、相手のミドルやフォアストレートに打っていたところです。
このコース取りの良さは、是非私たちも学ぶべき点だと思いました。
1ゲーム目は張本選手の圧勝で先取します。
2ゲーム目は陳夢選手の逆襲が始まります。
がらっと変える戦術転換が光りました。
張本選手のフォア前にサーブを出すと、強い攻撃的レシーブが返ってこないと読んだ陳夢選手(および中国ベンチ)は、ここに下回転系のサーブを集めます。
途中、サーブの立つ位置を変えたりしますが基本的には同じ攻め方をしていた様に私には見えました。
これで陳夢選手が常に先手を取る形になり、2ゲーム目を取り返します。
これでゲームカウントは1-1になります。
試合の中盤~終盤
運命の3ゲーム目。
これを取った方が俄然有利になるので、両ベンチとも必死の戦いだったと思います。
この段階になると、両選手・両ベンチ共に作戦がはっきりとしてきます。
陳夢選手の作戦は「徹底したミドル攻め」。
張本選手のフォア前にサーブを出しては、3球目をミドルへ速攻をかける。
これが1つ目のパターンです。
もう1つは速いロングサーブを、張本選手のフォアミドルに出して、3球目をもう一度ミドルへ速攻するか、左右に打ち分けるか、というパターンです。
一方の張本選手は、ラリー戦の強さ(特にコース取り)とサーブのコンビネーションで対抗します。
見所は、6-6からの張本選手のサーブです。
陳夢選手相手に2本連続サーブで得点します。
これは今まで出してこなかったサーブで、さすがの陳夢選手も対応しきれなかったということです。
1本目はアップ系のショートサーブ、2本目は下回転系のロングサーブでした。
2本目の下回転系ロングサーブは、3ゲーム目の序盤でも使っていて、効いているとの手応えがあったかも知れません。
試合のヤマ場でとっておきのサーブを出すのは大変勇気のあることですし、張本選手のサーブのバリエーションの多彩さに驚かされます。(^^)
これで8-6で張本選手のリード。
このまま押し切れるのではないか、と私は期待してしまいました。
ところが、ここから陳夢選手の怒涛の逆襲が始まります。
2つ目のパターンのミドルへのスピードあるロングサーブからの3球目攻撃、そして意表をついてバック前サーブからの攻撃で瞬く間に8-8の同点に追いつきます。
次の1本も陳夢選手が取り9-8と逆転します。
たまらず日本ベンチがタイムアウト。
まだ1本張本選手のサーブがあるので、ベストなタイミングだったと思います。
タイムアウトは試合の流れを引き戻すために取るものです。
日本ベンチとしては、次の1本は絶対に欲しいところです。
それは中国ベンチも同じで、折角の流れを日本に渡してなるものかと考えています。
張本選手も頑張ったのですが、残念ながら次の1本は陳夢選手が取り、流れは変えられずこのゲームも陳夢選手が取ります。
日本のタイムアウトのチャレンジは、このケースでは失敗に終わりました。
タイムアウトで言えば、中国ベンチのタイムアウトは鋭いです。
私の記憶が曖昧で申し訳ないのですが、この試合だったか、早田戦だったかの時に、ハッとさせられる取り方をしていました。
確か、陳夢選手が空振りのミスをした直後だったと思います。
陳夢選手らしからぬ凡ミスの様に私には見えましたが、きっと中国側からすると「嫌なミス」だったのでしょう。
確かに次の1本を日本に取られると、一気に日本に流れが傾いてもおかしくない状況でした。
すかさず中国ベンチはタイムアウトを取り、次の1本もしっかり得点して、流れは変わらなかったのです。
タイムアウトのチャレンジが成功したケースです。
中国のタイムアウトの取り方も、大局観というか、試合全体の流れを観ているというか、何か独特の考えがある様に思えました。
話を試合に戻します。
第4ゲームは、さらに圧巻でした。
前半、陳夢選手は張本選手のフォア前にサーブを集めていました(前述した1つ目のパターン)。
後半になると一転して、張本選手のミドルへのロングサーブばかりでした(前述の2つ目のパターン)。
ロングサーブを出すと相手に打たれはしますが、威力がやや落ちますし、鋭いコースにも返されにくい。ここを陳夢選手に狙われたのだと思います。
張本選手側からすれば同じサーブを続けられると「次は違うサーブが来るのではないか」と警戒する気持ちがあったのかも知れません。
張本選手も食い下がるのですが、最終的には押し切られてしまいました。
高い技術力と相手の弱点を見抜き、作戦を貫徹する強さの中国と、その最強中国に対し、あと一歩まで食い下がった日本。
本当に見応えのある、そして学ぶべき点の多い試合でした。
最強中国に勝つためには
では、どうすれば中国を倒せるか。
これは私の妄想なのですが、私に秘策があります。
正確無比なコンピュータの様な作戦をとって来る相手ならば、そのコンピュータを狂わせることをしてやれば良いのです。
それはまた別の機会にお話したいと思います。ふふふ。