素直さ・楽しむ・我を捨てる
今年ももう残りわずかですが、相変わらず多くの試合に参加しています。
ここ最近の試合の中で、改めて気付いた事がありました。
それは、
・素直に状況を観る
・それを楽しむ
・「勝ちたい」という我を捨てる
が大切だということです。
最近の成功談と失敗談を交えながら、それらのことを具体的にお話します。
もしかしたら読者の皆さんの中にも、これと似た体験をした方がいるかも知れませんね。
【素直に状況を観る】
「素直に」というのは、「そのままに」という意味です。
どうしても自分の中の思い込みが邪魔して、事実を捻じ曲げて観てしまいがちです。
11月の初旬に岐阜県で行われた東海卓球選手権の年代別に出場しました。
初戦の相手は岐阜のT選手でした。左のペンドラで、受けの上手い選手でした。
卓球も将棋の様に「攻め」と「受け」があって、どちらか一方という展開はあまりありません。
試合の中で、1ゲームの中で、1本のラリーの中で、それは目まぐるしく交替します。
T選手は、その「受け」が上手いのです。
わざと誘い球を送り、相手が勢い込んで攻めてきたところを中後陣でさばくのです。
相手としては打たされている格好になり、最終的に打ちミスが出てしまうのです。
その誘い球というのが、かなりのクセ球で、少し曲がったり、少し伸びたり、逆に回転の掛かっていないナックルだったりするのです。
ところが、一見したところ、いつでも攻撃出来る気がするのです。
試合の前半で私はTさんの術中にまんまとハマりかけました。
これはマズいと途中で気付いて、誘い球は徹底してカットで繋ぐ作戦に変更しました。
1本カットをオーバーミスしたことがあり、それが記憶に残り、ラケットの角度を抑えなくてはと「思い込んで」しまいました。
その後、Tさんのナックルドライブに対して何本もカットをネットに掛けるミスを繰り返してしまいました。
あ、このボールだ!と分かっていても思い込みが邪魔をしてミスしてしまうのです。
しかし私もやられてばかりではありません。
Tさんのクセを読み、ボールを選んで、攻撃を仕掛けました。
Tさんの独特の間合いから出すサーブや、ニョロっと変化する山なりドライブが決まれば、Tさんのペースです。
それをTさんがミスするまで我慢してカットで粘ったり、攻撃に結び付けられたら、私のペースです。
試合は一進一退を繰り返し、フルゲームまでもつれ込みました。
【それを楽しむ】
Tさんは性格がオープンなのか、試合中になんだか呟いているのです。
私も最初は全く耳を貸しませんでした。
ところが試合が進むにつれて、Tさんの表情や仕草や呟きが、だんだんこちらにも伝わるようになりました。
Tさんは自分が得点しようが失点しようが、なんだかとても楽しそうなのです。
私もTさんとの駆け引きが楽しくなって来ました。試合の後半になればなるほど長いラリーが続くようになりました。
卓球のラリーを通じて、Tさんと会話しているような気になりました。
(これって変でしょうか?笑)
長かった試合も、いよいよ最終局面を迎えました。
この状況になって、Tさんはどう思っていたかは知りませんが、私はとても変なことを思っていました。
それは、
「なんて、楽しいのだろう!ここ(岐阜)まで来た甲斐があった。このままずっとこの試合が続いたら良いのに!」
というものでした。
すると、どうでしょうか。
あれほど苦しんだTさんの変化ドライブがはっきりと見えるようになったのです。
あ、なーんだ。こう返せば良いのだ!と分かり、スーッと肩の力が抜けました。
最後の最後に私のカットが冴えて切れ味が増し、3本連続でTさんのネットミスを誘い、試合に勝つことが出来たのでした。
試合後は、ノーサイドです。
将棋で決着が着いた後、勝負の分かれ目はどこにあったのかと局面を振り返る様に、Tさんと卓球談議に花が咲きました。
お互いの健闘を称え合い、再戦を誓って別れました。Tさんとの心の距離が縮まった事は言うまでもありません。
勝敗を越えて心の底から楽しめた時に、素直に状況を観ることが出来た一例です。
【我を捨てる】
「我を捨てる」とは、「自分の欲を捨てる」という意味です。
東海選手権から約一週間後、清水ラージボールリーグ戦に参戦しました。
私の所属チーム・八葉会は、ここまで全敗。来期は1部から2部への降格が濃厚です。
実力的に言って仕方がないことですが、しかし、何とか最低1勝はしたいものだと私は思っていました。
この日の試合数は4試合。案の定、あと1本が取れず黒星スタートでしたが、3試合目にようやくチャンスが巡ってきました。
ラスト5番で私に出番が回ってきたのです。しかも相手は対戦成績で勝ち越しています。
1ゲーム目を獲ったところまでは良かったのですが、そこから逆転負けを喰らってしまいました。
「これはチームが初勝利するチャンスだ。だから俺が勝たねばならない」
と思ってしまったのです。
こういう心理状態の時は、たいてい結果が良くありません。
プレーに力みが出てカットが浅くなってしまいました。展開にだんだん余裕が無くなって行きました。
最後は相手にネットインがついて、私は敗れてしまったのです。
「試合に勝つ」という結果を求めすぎてしまうと、かえって勝利は遠ざかってしまうものです。
そんなことより、「勝ちたい」という自分の欲を捨てて、結果は天に任せて、自分は目の前の1本を取る工夫をすることに明るい気持ちで専念した方が良い結果に数段近づきます。
以前のメルマガ「ご褒美と課題」で述べた苦い経験が全く活かされていない自分に改めて気付きました。
まだまだ修行が足りない、ということです。