自分の試合を観る
試合会場で三脚をセットして、自分の試合を撮影している選手をよく見掛けます。
ビデオカメラをセットするのが面倒に思えたし、試合に集中したかったので私はあまり興味が持てませんでした。
しかし、最近はスマホやタブレットで簡単に撮れることが分かり、家に放ってある三脚があったので、撮ってみました。
ビデオで自分のプレーを観てみると、意外な気付きがあったので、今号ではそのお話を皆さんとシェアします。
【まず乗り越えるべき壁】
私はビデオを通して、自分の卓球のプレーを初めて観ました。
正直、とても恥ずかしく感じました。(^^;;
憧れの一流選手の動画を良く観ていたので、それと比べてしまうのかも知れませんが、自分がとても下手クソに見えました。
「なんだ、このプレーは!」
「身体の使い方が超下手だなぁ」
「しかもロボットみたいに身体が固い」
などと悪い所ばかり目につきます。
恐らく私は持病の腰痛をかばっていて、上体の捻りが極端に少ないので、見た目が固いフォームになっているのでしょう。
主戦技術であるツッツキやバックカットも目を覆いたくなるくらい下手に見えます。
もっとバックスイングを高く取って、左足に体重を乗せて充分にタメを作って、身体全体でスイングしなくてはなりません。
しかし私のバックカットはタメが十分でなく腕を中心とした上体だけでボールを飛ばそうとしているのです。
これでは、相手のボールの勢いを吸収出来ずケンカしてしまうので、ダメです。
バックのツッツキも余裕が感じられず、チョンっという擬音の表現がぴったりくるツッツキなのです。
もっとボールを薄く捉えて、肘を張らずに脇を締めてスッとスイングしてニュートラルに戻らなくてはなりません。
よくこんなプレーで今まで戦ってきたものだ、と自虐的に思います。
しかし考えてみれば、私の練習相手は、その私の下手なプレーを毎回観ているわけで、今更私が恥ずかしく思ったとしても「時すでに遅し」です。
自分の技術的課題は、じっくり腰を据えて取り組むとして、自分のプレーをビデオで観るにあたってまず乗り越えるべき壁とは、この恥ずかしさの克服だと思います。(笑)
「このビデオに映っているのは、自分に似ているが、全くの別人だ」
と思い込む様にして、この恥ずかしさを私はなんとか克服しました。(爆)
【ビデオを観て気付いた、私の心のクセ】
恥ずかしさを克服して(?)、自分の負けた試合のビデオを数回見直しました。
相手は他県の実績のあるシード選手でした。知り合いからある程度情報を得ていました。
左利きのペンドラで、繋ぎを駆使して、チャンスボールだけ強打してくる、とてもやりづらい相手でした。
試合前のトスに私はことごとく負けてしまいボールはVICTAS、コートは見えづらいサイド(この大会はゲーム毎のチェンジエンドなし)で試合することになりました。
しかも床の色は白っぽく、カットする時にボールが見えなくなる時があります。
慣れないボール、見にくいサイド、白っぽい床の色、と不利な条件が幾重にも重なってしまいました。
なるべく気にしない様に努めましたが、やはり余分な力が入ってしまいました。
結果は0-3で負けてしまいました。
・カットマンからオールラウンダーを目指す
自分としては積極的に攻撃を仕掛けた。
・多少のミスは出たもののスコア以上に、
内容は競っていた。
・戦い方は間違っていなかったと思うし、
次に対戦すればもっと競るのではないか。
試合直後には、そう思っていました。
そう、ビデオを観るまでは、です。
ビデオを見直して、つくづく思いました。こんな戦い方では何回やっても勝てないと。
私はただ焦って攻撃していただけなのです。たまたま読みが当たって得点に繋がっていたケースもありましたが、それは偶然です。
難しいボールも関係なく、次の球を攻撃すると決めていたから攻撃していたのです。ミスするはずです。難しいボールですから。
そこに判断が無かったわけです。
相手が実績のある強い選手だと思うほど、自分は攻撃しないと勝てないのだと思い込み無理な攻撃を繰り返していたのです。
何故、こんな心理状態になるのか。
そこに私の心のクセがあったのだと、ずっと考えていて思い当たりました。
そのクセとは、自分を過小評価(卑下)し、相手を過大評価(恐れ)することです。
要は自分に自信が無いのです。
「何をやってもこの相手には、
効かないのではないか」
「実績のあるこの相手は、
きっと奥の手を出してくるぞ」
「たまたま今は自分の攻撃が決まったが、
次は入らないのではないか」
などなど、まだ見ぬものに対する恐怖心から試合中にネガティブな妄想が膨らむのです。
もっと目の前の現実を見れば良いのに、起ってもいないことを気にし過ぎるのです。
【対処法のヒントもビデオの中に・・・】
心のクセは簡単には治らず、如何ともし難いのではありますが、対処方法がないわけでは決してありません。
卓球競技の場合ですと、それは相手の心理を読むことです。
相手が何を考えているかが分かれば、虚像に怯える必要は全くありません。
私も試合中、相手をよく観ます。
しかしそれは、自分のサーブの時の相手の表情だったり、相手がサーブを出す前の様子であったりするのです。
ベテランになるほどポーカーフェイスを装いますので、この機会だけで相手の心理を読むのは、実はなかなか難しいです。
私自身も相手にこちらの心理を読まれない様に、気をつけていますし。
その選手も表情からは、全く心理を読むことは出来ませんでした。
態度や表情に出易いのはプレーの合間です。
ビデオには、ばっちり映っていました。
今回、ビデオをセットしたのは、相手コート側でした。
それは私がトスに勝って、そちらを選択する予定だった側です。
その選手は、私に見えない様に、私に背を向けて、つまりビデオの方を見て感情をそっと吐き出していたのです。
その時の私はと言うと、大抵の場合、球拾いをしていました。
カットマンだから球拾いの機会が多いのはある程度仕方ないことかも知れません。
ですから、試合の最中に彼がそんな表情をしていたなどとは、知る由もないのです。
なるほど、こういう攻め方をしたときに、彼はとても嫌がっていたのだ、とか、試合中に気付かなかった身体的特徴などが大変よく分かりました。
これも思わぬ収穫物でした。
まさか試合中にビデオ録画を見直すわけにも行きません。ベンチコーチに相手の様子を観察する様に頼んだり、次の対戦に向けて研究資料として活用すれば良いと思います。
自分が負けた試合をビデオでよく見直すと、成長のチャンスがあることが分かりました。