伊藤美誠監督?

OBUコーチ

先の世界選手権団体戦で、伊藤美誠選手がひときわ存在感を放っていました。

オリンピック選考レースに敗れ、失意の底にあった彼女が、本来の輝きを取り戻したかに私には見えました。

今回は私から見た伊藤美誠選手について書いてみたいと思います。

伊藤美誠選手のベンチワーク

アナウンサーに「伊藤監督ですか?」と冗談で呼ばれるくらい、ベンチで伊藤選手のアドバイスをする姿が目立っていました。

特に決勝の中国戦では、生き生きとして、とても楽しそうな様子が映っていました。

「打倒中国」は日本女子チームの共通の目標ですし、それに向けて、その一員として自分も関わっている、と。そんな想いでしょうか。

本来なら自分も選手として試合に出たかったという気持ちも、心のどこかにはあったと思われるのですが、決勝戦の様子を見た限りでは微塵も感じられませんでした。

考えてみたら伊藤選手ほど、対中国戦のアドバイザーとして適任な選手はいませんでした。

伊藤選手の経験を考えれば、ずっと中国選手と対戦してきたわけで、もちろん勝利した経験もありますし、中国選手の特徴を熟知しているのです。

しかも対戦する日本選手は、自分と同じか近い年代で、かつ、ずっと自分と対戦してきた相手ですので、手の内や性格もよく分かっています。

孫子の兵法に、

「敵を知り、己を知れば百戦危うからず」

とありますが、伊藤選手はまさに敵も味方も両方をよく知っていたわけです。

アドバイスを受ける早田・平野・張本の3選手も、年上男性の監督から言われるより聞き入れやすかったのではないでしょうか。

しかも伊藤選手は遠慮なく物を言うタイプですし、中国選手に対しても物怖じしない明るさと強さを持っています。

様々なプレッシャーを抱えて試合をする選手たちにとって伊藤選手のベンチワークは、とても頼もしく映ったと思います。

渡辺監督の気遣い

伊藤選手が監督然として輝くほど、「あれ?渡辺監督は何しているの?」という気になります。

ベンチコーチでも殆ど伊藤選手がアドバイスしていて、渡辺監督はしゃべっても一言二言でした。

しかしこれは渡辺監督がそうするのが良いと判断したからなのでした。敢えて伊藤選手にアドバイザーの役をやらせたのです。

何故か。
それはトータル的に見て日本女子チームにとってプラスになるからです。

渡辺監督は、選手時代から既成概念に囚われない柔軟な考え方の持ち主だったように記憶しています。当時のインタビュー記事を読んだ時に、他の選手と違う考え方をする人だという印象がありました。

ですので「ここは伊藤に自由にやらせる」と考えたに違いありません。

また、決勝戦のオーダーにおいても、平野美宇選手を3番で1点使いしました。

何故平野を2点使わないのか、15歳の張本美和選手に2点任せして良いのか。

批判的な印象を持った人は多いのではないかと想像します。

しかし、これには事情があったそうです。

平野選手は、予選で異質ラバーの選手に大苦戦の上に勝利しています。
また、大会前まで熾烈なオリンピック代表争いをしていて疲労も溜まっていたそうです。

世界選手権の後半に入ってから、ようやく平野選手の調子が上向いてきたところだったらしいのです。

そんな時は1点集中で試合に臨んだ方が力を発揮し易いものです。
「この試合で全てを出し切るんだ」と。

実際、団体戦に2回出場して2回ともベストなパフォーマンスをするのは難しいことです。

果たして平野選手は存分に力を発揮して、見事に勝利を収めました。

結果的に平野選手の3番起用は、大正解だったわけです。

渡辺監督の、この気遣い、この読み。
さすがです!と私は唸ってしまいました。

オリンピックのリザーブ辞退

さて、伊藤選手が次回のパリオリンピックのリザーブを辞退したとのことです。

「私はリザーブには向かない」という彼女の一言が物議を醸し出しました。

自分がオリンピックに出る時は多くの人に支えてもらっていたのに、その恩義に報おうとしないのはいかがなものか。なんてわがままで勝手な選手なのだろうか。

批判的な見方をした人たちの心情を表すと、この様なことだと思います。
これは私もよく理解できます。

半面私は、彼女が「リザーブに向かない」面も理解出来るのです。

そもそも戦型的に練習相手に向きません。
伊藤選手は異質速攻型で相手を翻弄する戦型ですから、相手の調子を出す役割は向かないのです。

伊藤選手と似たタイプの選手が、対戦予定の中にいれば良いのですが、それもまずいません。

ですので伊藤選手と練習しても、対伊藤選手の対策にはなりますが、他の選手の対策には全くならないだろうというのが私の考えです。

調子を上げるどころか、調子を崩しかねないのです。

ただ個人的には世界選手権であれだけ選手の皆の力を引き出したのだから、是非オリンピックも同行してベンチ入りしてコーチの役割をして欲しいと思っています。まあ、無理かなぁ!(^^;;

伊藤選手の新たな目標

伊藤選手が生き生きと輝きを取り戻したのは、新たな目標を見つけたからです。

それは世界ランキングで一位になることです。

日本人の誰も成し遂げたことはありません。
確か、石川佳純選手の3位が最高だったのではと思います。

伊藤選手はどうやら、誰も成し得ていないことを一番先にやり遂げたいという想いが強いみたいです。それも形に囚われない自由な彼女らしい発想で。

まさに「伊藤選手の野望」ですね。

別に私は伊藤選手のファンではありませんが、生き生きと自分の夢に挑戦する姿は好きです。

伊藤選手に限らず、他の日本の選手も皆、生き生きと夢を追って欲しいと思います。

持久系プロテイン

ビーレジェンドプロテイン「スポーツ&ウェルネス」の 詳細はこちら