楽しい卓球指導 その4
初心者の卓球個人指導を続けています。
以前ご紹介したKさんご夫婦とSさんです。
3人共に今のところ同じ戦型ですが、特徴がそれぞれあって、大変教え甲斐があり指導している私自身が楽しいです。
Kさんご夫婦もSさんも「とても楽しい」と言って下さり、週一回の練習日が大変待ち遠しいご様子です。
現時点で卓球指導における気付きが、色々ありましたので皆さんとシェアします。
やりながら見えてくる将来像
それは各選手の将来像です。
同じ様な練習を3人ともやるのですが、だんだんとその違いや個性が出てきます。
準備運動と感覚練習をやって頂き、その後基礎練習を欠かさずやるのですが、その時点ですでに個性が発揮されます。(^^;
Kさんの奥さんは真面目でコツコツと努力するタイプです。毎日少しずつ感覚練習をやってきてくださいねと言うと、きっちりとこなして来ます。
Kさんのご主人さんは、自分の興味のあることには研究心が旺盛で、どんどん開拓するバイタリティが感じられます。
テニスの経験者だけあって運動神経が良く、小手先が器用な印象があります。
Sさんは明るいお調子者という表現がぴったりで、黙々と球を打つよりも、笑いながら楽しく打った方が伸び伸びとプレー出来ます。
技術の飲み込みは早いのですが、すぐに忘れてしまいます。
根気もあまり続かない様に見えます。
3人とも指導の前には、私はそれぞれの練習内容を考えて臨みます。
しかし、基礎練習をやりながら、急遽もう1ランク上のレベルの練習をしたりもします。
とても良い感覚で打っているなとこちらが感じる時には、さらに上のレベルの練習をするわけです。
「あ、今なら行ける!」と私が直感した時は少しチャレンジ的に難しい練習をします。
これが意外に出来ちゃったりするのです。
こういうのは本人も私も楽しいです。
逆に、今の時点だからこそ、悪い癖を直すための時間を取ることもあります。
例えばKさんのご主人さんは、バックブロックの時に右肩が入り過ぎて、半身の様な体勢になる癖があります。
フォアとの連携を考えた場合に、これでは遅れてしまいます。
ですので、身体の正面で捉えられる様に矯正して行きます。
何故、私がそういうところに気付くかと言うと、その人の将来のプレーが見えているからなのです。
なんとなく3人それぞれのプレーの将来像が私には想像できてしまうのです。
そこから逆算すると、今身に付けておくべき技術が分かったりするのです。
3人は私との練習以外にも、卓球クラブで卓球に親しんでいるのです。
私はその時間とも相乗効果を出したいと考えています。
つまり、私との練習で卓球の基礎力を付け、その上で他の場所で違う相手に試してくるというやり方です。これを繰り返す、と。
上手く行けばそれで良いし、上手く行かなくても新たな課題が見つかります。
ですから3人には他の場所で卓球をした時にどんな様子だったか、どんなことを感じたかを聴くようにしています。
興味を中心に伸ばす
感覚練習と基礎練習は毎回の練習で欠かさず行いますが、その後の練習は、状況により変えています。
特にKさんのご主人は研究心が旺盛なので、ヒヤリングしながら「本人がやりたい技術」を中心に練習したりします。
卓球クラブで他の選手にサーブでやられてしまい、とても悔しい思いをしたらしく、ならば自分もとサーブの研究に余念がないのです。
悔しさは上達の原動力となりますので、とても良い傾向です。
よりサーブが切れるにはどうすれば良いか、サーブの時の身体の使い方、ルールに抵触しないように気を付けることなどを、指導しています。
もう一つは、ちょっと練習すれば出来そうな技術です。
例えば、Kさん夫婦には下回転のボールを送り、ドライブで返球するというノックをしています。
ある程度、安定してドライブが出来た頃を見計らって、少し球質の違うボールをわざと送ったりします。
予告する場合としない場合があります。
球質というのは、コース、長さ、回転を指します。
ランダム性を持たせて、対下回転のドライブ技術の幅を持たせる狙いです。
自分が興味を持っている技術や、得意な技術のレベルアップを図ると、俄然やる気が出るものです。
もちろん、上手く行った時は褒めます。
教える段階、身に付ける段階
教えていて思うのは、新しい技術を覚えるには、教える段階と身に付ける段階の2つがあるということです。
初めてやる時は、細かい点を丁寧に解説しながら、やり方を教えます。
全体のイメージと気を付けるポイントを中心に説明します。
ただ、説明し過ぎない様にもしています。
まずやってみましょうとすぐに説明を切りあげます。
説明したポイントの全てが完全に出来るわけもなく、1つでも進歩した点があればすかさず褒めます。
と同時に、この人はこのポイントを最初にやろうと思ったのかと、観察して情報を読み取ります。
次にそのポイントのレベルを上げながら、他のポイントも気に掛ける様に仕向けます。
この辺りで、再度私がやって見せます。
全体のイメージ像を作りながら、再度3点くらいポイントを説明します。
そしてまたやってもらいます。
ちょっとでも進歩した点があれば、すかさず褒めます。
やってみせて説明する。
実際にやってもらう。
出来たところをみつけて褒める。
これを何度も何度も繰り返します。
有名な山本五十六元帥の言葉、
「やって見せて、やらせてみて、褒めてやらねば人は動かじ」
を地で行っている感じです(笑)。
私の中では、以上が「教える段階」です。
ある程度ポイントがクリア出来る様になったら、次の「身に付ける段階」に入ります。
どんどんボールを打ってもらい、自分の力で各ポイントのレベルアップに挑戦してもらいます。
この段階では、上手く行った点は褒めますが忘れておざなりになっている点も指摘します。
全部が上手く行けば、かなり良いボールが打てている状態になり本人も気持ちが良いし、さらに私に褒められようと頑張ります。
好循環を意識的に創り出すのです。
ただ忘れがちなポイントというのは、その人の苦手な部分でもあるので、「教える段階」に戻ってやり直す時もあります。
それとこの段階も根気よくやることを心得ておかなくてはなりません。
次の練習の時にはまた元に戻っていることも実は「よくあること」なのです。
身体に覚え込ませるまでには、何度も何度も繰り返すことが必要です。