『逆転勝ちに必要なもの』
最近の私の試合で逆転勝ちがありました。
相手に先行されて、何とか追いすがり、終盤で逆転して何とか勝つのです。
あの試合はどうして勝てたのだろうと不思議な気持ちになります。
前半戦だけを見ると負け試合だったわけで、どう見ても勝てる要素が見つからなかったのですから。
もし仮にそこに法則性があるのであれば、誰でも逆転勝ちが出来るはずです。
今号では、どういう条件が揃った時に逆転勝ちが出来るのか、そのために普段からどういう生活態度が必要かを考察します。
私の体験
先日の中部日本選手権の2回戦で、私はフルゲームで勝ちましたが、第5ゲームが大逆転する展開でした。
1-7で負けていた状況から、なんと7-7まで追いつき、9-9になり、最後は11-9で勝つことが出来ました。
ゲームオール2-2となり、第5ゲームに臨む前にはもう一度作戦を整理してスタートダッシュを掛けるつもりでした。
先に5本獲ってチェンジコートして、その直後の1本を獲る計画だったのです。
最終ゲームは先行逃げ切りが鉄則だと知っていたからです。
ところがいざ始まってみると、全く逆の展開になってしまいました。
相手も狙っていたのかも知れませんね。
挽回を焦っていて攻撃ミスをしたり、2本連続ツッツキに凡ミスが出たりして、気が付いたら1-7で負けていたのです。
正直、この試合はもう負けたと思いました。
私の試合を観ていた仲間も「終わったな」と思っていたそうです。
しかし私は気持ちを切り替えていました。
「この際、勝負のことは一旦忘れよう。最後まであきらめないで頑張り抜こう。応援してくれている仲間もいるのだ」
そんな気持ちだったように思います。
実際、SNSを通じて多くの友人・知人から応援メッセージを頂いていたのです。
もう一度、ゲーム間に仲間のKくんからもらったアドバイスを思い出しました。
それは、
「こちらはツッツキを切り、相手に持ち上げさせてドライブを打たせて、今度はそれに対してナックルカットを送りオーバーミスを誘う」
というものでした。
これらを基本作戦として、あまり相手に悟られない様にするために、逆のこともするつもりでした。
最後は総力戦だとも考えていました。
相手が私にやられて嫌なことは何だろう?とも考えていました。
サーブを出す位置を変えたり、投げ上げる高さを変えながら、相手のフォアサイドに
ツッツキを送る様に心掛けました。
1本、また1本と、私はじわじわと得点し、ついに7-7まで追い付きました。
「次の1本が勝負だ」と、お互いに分かっていました。
相手はサーブから連続攻撃を仕掛けて、私がそれをカットやロビングで凌ぐ展開になりました。
17本続く長いラリーになり、最後は私のロビングがわずかに外れて相手の得点になりました。これで7-8です。
私もダメージを喰らいましたが、相手にも相当なダメージが残りました。
「これだけ打ってもなかなか抜けない」という精神的ダメージです。
これがその後のラリーに影響しました。
「もっと早く決めなければ」「もっと強く打たなければ」という、相手の焦りや力みに繋がった模様です。
彼は1本強打を決める間に、2本ミスしました。これで9-9です。
彼にとっては「勝負の3本」だったのでしょう。
渾身の攻撃でしたが、私のカットの変化が僅かにラケット角度に狂いを生じさせて、彼の得点にはならなかったのです。
最後は集中力が切れたのか、相手が2本続けて凡ミスを繰り返し、あっけない幕切れで私が勝利しました。
逆転勝ちに必要なもの
この体験から、逆転勝ちに必要なものは2つあると私は思います。
1つは、冷静な試合運びです。
最も有効な作戦を思い出し、相手にそれと悟られない様に注意しながらコツコツとやり続けることです。
もう1つは、気持ちを切り替えることです。
追い込まれてしまったのは仕方がない、こうなったら最後まで頑張り抜こう!と腹を括るのです。
この2つが同時に揃わないと、相手も必死になっているわけですし、なかなか逆転勝ちは難しいかなと思います。
2つの条件の内、難しいのは後者の方です。
頭では分かってはいても気持ちはコントロールが難しいのです。
捨てる
「諦めないで頑張り続ける」ためには、「勝ちたい気持ちを捨てる」ことです。
試合に勝ちたい気持ちは誰にでもあります。
しかしその気持ちは、時には我欲(わがまま)にもなるのです。
それをこの際、さっぱりと捨てるのです。
「試合を捨てる」のでは決してありません。
「自分の我欲をさっぱりと捨てる」のです。
相手を力でねじ伏せてやろうとか、がつがつしたモチベーションを持ち続けるのは、どこかで無理が生じます。
競った状態がずっと続く状況では、きっと脆さが露呈するはずです。
むしろ、
「勝つとも思わない、負けるとも思わない、その状況を楽しんで、感謝して、1球1球に全力を注ぐ」
というハイレベルな平常心の方が強いです。
鋼鉄の強さではなく、しなやかな強さです。
そのためのポイントが我欲を捨てる、です。
ところが試合の土壇場でやろうとしても、普通はなかなか出来ません。普段の生活でトレーニングを積んでおく必要があります。
差し当たって出来るトレーニングとしては、朝起きたらぐずぐずせずにサッと起きることでしょうか。
目が覚めるというのは、もう起きても良いという信号なのですから。
簡単そうに見えても、もう少し寝ていたいというこの我欲は、なかなか捨てられないものです。