『負けるシナリオ』
「試合に負ける時は、無意識のうちに負けるシナリオを自分の中で作っていて、その通りに振舞ってしまうものです」
という話を元全日本マスターズチャンピオンのNさんから聞いたことがあります。
聞いた時は「ふーん、そんなものか」と私は思っていました。
当時は思い当たる節が無かったのです。
しかし、ここ最近の試合で負けたり勝ったりしている中で、なるほど自分にもあるなぁと実感する様になりました。
私が負ける試合の中で
最近の私は自分の試合を撮影しています。スマホと三脚があれば簡単に出来ます。
帰宅したらすぐにYouTubeにアップして、記録として残すようにしているのです。
これはと思う試合は何度も見返したり、スコアの経緯を卓球ノートにつけたりして分析をしています。
頑張ったけど結果的に負けてしまった試合もよく観ます。そこに上達のヒント、つまりお宝が隠されているからです(笑)。
せっかくプレーがとても良いのに、このミスが台無しにしているなぁなどと気付きます。
そして私にはある傾向があることが分かりました。
私はカットマンという戦型で基本的に粘り強く戦うのが身上ですが、競って来ると必ず早い段階で攻撃を仕掛け、多くの場合は失敗しているのです。
つまり、「大事な場面で攻撃ミスをしている」のです。
ギャンブルに出て、ことごとく失敗。
成功すれば得るものも大きいが、失敗すれば大きな痛手となります。
私の心理としては、
「このままではジリ貧だ。何とか試合の流れを変えよう。ここは積極的に攻撃に出よう」
というものです。
競った場面で確実に決められるほど、私は攻撃が上手なわけではありません。
しかも難しいボールにまで手を出して、決めに行ってしまいます。
同じ攻撃するのであっても確実に回転を掛けて入れるとか、もう少し柔軟性があっても良さそうなものですが(苦笑)。
※実はここが私の課題だと思っています。
相手にしてみれば、競った苦しい場面で簡単にミスしてくれるので大助かりです。
ですから、こういう時に私が採るべき戦術は、自分は無理せずに徹底的に粘ることです。
相手に無理をさせる方が結果が良いのです。
相手にもある「負けるシナリオ」
逆に私が勝った試合では、相手の方に「負けるシナリオ」があるように、どうも思えるのです。
例えば、相手が
「これだけ打ってもカットで返してくる。なので、もう自分の攻撃は通用しない。だから自分は負ける」
と思い込んでいるのではないだろうかとこちらが思うくらい崩れていった場面があったのです。
そしてまだ勝負がついたワケではないのに、最後の数本は簡単にミスを繰り返して、私に勝利をプレゼントしてくれました。
実はこれはとんでもない誤解です。
私の方はやはり強打を打たれるのは苦しく、カットで返せる確率も半々くらいかなぁと思っているのです。
確かに試合の序盤はラケットに当てることも出来ませんでしたが、試合が進むにつれて
こちらも慣れてくるし、何本かは何とか返球出来るかなという程度なのです。
攻撃が通用しないなんてことは、決してないのです。
逆にカットマンの私としては、こういう状況に陥りがちな相手の心境を上手く利用すれば勝ち易くなります。
負けるシナリオのメカニズム
以上で述べてきた様に「負けるシナリオ」とは自分が勝手に思い込んでいる幻想に過ぎないのです。
現実は違うのです。
状況が苦しいから誤解しているだけです。
あれをやってもダメだった。
これもやっても通用しなかった。
オレはベストを尽くしたが相手の方が強い。
あぁ早く試合に負けて楽になりたい。
もしかすると、心の奥底にはこんな心理も働いているかも知れません(ドキッ!笑)。
冒頭で「負けるシナリオ」について教えてくれたNさんのことを話しましたが、彼はその存在が自分にあることに気付いてから負けにくくなったと言っていました。
「あ、自分は今『負けるシナリオ』に陥っている」
と分かる様になったと言うのです。
試合をやりながら自分の心を第三者の目で見れるなんて、さすがは元全日本マスターズチャンピオンですね。
私の課題
私の課題は以下の通りです。
1.試合で競った時ほどグッと我慢して粘り強いプレーに徹する。安易な攻撃に走らない。
2.攻撃は2段構えを覚える。つまりリスクを冒してでも決める攻撃と確実に回転を掛けて入れる攻撃の2つ。競った場面で攻撃するとしたら後者を使用する。
3.相手の「負けるシナリオ」を利用する。
これらの課題に気付くことが出来たのも、試合に出続けたからだと思っています。
自分で体験して初めて意味が分かることもあるものですね。