『楽しい卓球指導 その2』
私はDくんの他にも個人指導をしています。Kさんご夫婦です。
Kさんは70代のご夫婦で、ふとしたきっかけで知り合いになり、お互いのニーズがマッチしたので、卓球の指導をするようになりました。
Kさんご夫婦は2人とも卓球の初心者です。
卓球経験者のDくんに対する指導とは、方法も内容も異なります。
どんなことに気を付けて指導しているか、皆さんにお話したいと思います。
Kさんご夫婦が望むこと
夫婦で一緒に運動を始めたいということで、卓球を選択したKさんご夫婦でした。
静岡市の主催する卓球教室へ通い出します。
そこには大勢の生徒さんがいて、通常は、基礎練習の後、くじ引きでパートナーを決めダブルスの試合をやる流れだそうです。
初心者であるKさん達は試合慣れしておらず訳が分からないうちに負けてしまいます。
パートナーになる人に、組んでもらっていつも悪いなぁと感じているそうです。
また、自分と同じレベルの人同士で練習するのですが、お互いにミスばかりでラリーが続かず、球拾いばかりしている感覚になるそうです。
ですから、Kさんはきちんと卓球を教わって基本をしっかり覚えたいと思っていました。
そんなところに私との出会いがありました。
私もDくんの指導はしていたものの、初心者の方を教えたいと思っていました。
出会いは偶然でしたが、この様な経緯でKさんご夫婦を指導することになりました。
Dくんの時と同様、将来どうなりたいのかをよく話し合いました。
Kさんご夫婦の希望は前述の通りですが、それでは私自身があまり面白くないので、私から提案しました。
「こっそり練習して上手になって、卓球のお仲間を驚かせましょう!
あれ?いつの間にか上手になりましたねって言ってもらいましょう」
Kさんご夫婦の表情がぱあっと明るくなり、私たちの目標が決まりました。(^^)
Dくんの場合も同じですが、私は卓球指導を始めるに当たって、覚書を取り交わしています。
その覚書の一番最初に、一緒に話した目的(目標)を挙げています。
これは、指導期間(最初は1年)を通じて、その目標に向かうことを常に意識することと初心を忘れないことの2つの意味があるのです。
実は初心者が一番伸びしろがある
指導していて思うことは、
「初心者は無限の可能性があるなぁ」
ということでした。
最初に指導したのは、グリップの種類とボール突き(スイートスポット)でした。
グリップの種類として、
・フォアハンドグリップ
・バックハンドグリップ
・オーソドックスグリップ
の3種類があること、そして技によってそれらを使い分けることを話しました。
また、何年も卓球を続けて行く間には、グリップが変化することも伝えました。
ボール突きに関しては、スイートスポットの存在を体感してもらうことを重視しました。
ボールが真ん中に当たれば、弾みが良く手に響く感触がとても心地良く感じられること、良い音がすることを分かってもらうのです。
逆に外れると、弾みは悪く手には鈍く響き、あまり良い音がしないことも体感してもらいます。
卓球の練習の初歩の感覚練習なのですが、Kさんご夫婦は非常にご満足頂けました。
と言うのも、Kさんご夫婦にとっては全く知らない世界の話で、こういうことをきちんと教わりたかったそうなのです。
最初は10回も続かなかったボール突きが、今では軽く数百回続く様になりました。
毎日、お二人で自宅でやっているそうです。努力の賜物だと思います。(^^)
まだ指導を始めて1ヶ月程度です。そう考えると凄いスピードで進歩している、と言わざるを得ません。
卓球の上達に年齢は関係無さそうですね。
初心者の無限の可能性を私は感じています。
目標は常にアップデート
指導に当たって私が意識していることは、まずその日のコンディションがどうかということと、今日の練習の目標です。
選手のやる気を引き出し持続させるために大切なことは、目標を常にアップデートすることだと思っています。
目標には大きく2つあります。
1つは、将来にわたって継続的に行う、長期的な目標です。
Dくんの場合の、全国大会でメダルを獲る、などがそれに該当します。
もう1つは、まさに今ここで行う、短期的な目標です。
Kさんご夫婦に壁打ちをやってもらっていますが、今日の目標は30回です!の様に今直ぐやる目標がこれに該当します。
頑張れば直ぐに達成出来そうなのが、短期的な目標の特徴です。
長期的な目標だけでは、なかなか到達しないので、やる気がいずれ萎んで来ます。
短期的な目標だけでも、直ぐに達成出来て充実感はあるものの、将来何処を目指しているのか分からないという「迷子」の様な状態に陥り、不安や焦りが生じてきます。
ですから、両方を上手くバランスさせてやる必要があると思っています。
長期的な目標も、あまりにそれが遠ければ、「まずはこれを目指そう」という中間目標の設定も必要です。
短期的な目標も、今日の練習で達成を目指すものから、次回・次々回まで含めて目指すという少し長目の設定があって良いです。
常にアップデートするのは、どちらかと言うと短期的な目標の方で、その日のその場で決めることがあります。
「今日の練習ではここまで行きましょう」
と言う様に。
コーチの役割としては、目標に対して今どの程度達成したかと言う「現在地」を指し示すことも必要です。
やはり卓球指導は楽しい
Dくんの場合も、Kさんご夫婦の場合も、次の練習内容を考えるのが楽しいです。(^^)
前の練習でやった技術を復習しつつ、新しい技術のさわりを少しだけ練習します。
この繰り返しになります。
私のイメージでは、選手のプレースタイルの全体像があって、必要な技術を1つずつ作っている感じです。
もちろん、私の勝手なイメージに当てはめるのではなく、あくまで選手の皆さんの個性を重視した形です。
明らかに悪い癖以外は、あまり指摘をしない様にしています。選手の自由度を保って、練習すると、こちらが気付かなかった個性にハッと気付くこともあります。
習得までに時間がかかる技術は、少しずつ、早めに取り組む様に心掛けています。
全てのパーツが揃えば良い作品になります。
最初はモデルの模倣ですが、最終的には世界に一つのその選手のプレースタイルになるはずです。
これが私の卓球だ、と胸を張って選手が言えるところまで一緒に伴走したいです。