張本智和選手の活躍

OBUコーチ 動画 戦術

世界選手権の団体戦が終わりました。

男子は準決勝で中国に敗れ3位。
女子は決勝で中国に敗れ準優勝でした。

今大会で最も輝いたのは、中国戦で2点を取った張本智和選手。

この大会でついに覚醒した張本選手ですが、今までと今大会とで何が違うのだろう?と疑問に思いながら私は試合を観ていました。

今号ではそんな張本選手の活躍について取り上げたいと思います。

【樊振東に3-2で勝利】

2番で王楚欽選手に3-1で勝利した張本選手は、4番で世界ランキング1位の樊振東と対戦しました。

それまでの対戦成績は、張本選手の1勝5敗。
何度挑戦しても跳ね返されてきた相手です。

結果はご存知の通り、張本選手がゲームカウント3-2で勝利します。

今回の勝因は何だったのでしょうか。

テレビ東京で土曜日夜10時から放映している卓球ジャパンという番組の中で、この試合を特集していました。

主に1、4、5ゲーム目と、張本選手が取るゲームを取り扱っていました。

見逃した方は、YouTubeのテレビ東京卓球チャンネルで観ることが出来ますので、是非、ご覧になってください。

張本選手の今回良かった点について、平野早矢香さんと福原愛さんが次のように分析していました。

平野さんは、

「ミドルやフォアに来たボールに対しても、苦しい体勢でもフォアハンドでドライブを掛け返していた。このカウンター気味のブロックで攻めていた」

と話し、福原さんは、

「樊振東選手の打球を分別出来ていた。強く打たれたボールはフォアもバックもブロックでまずは返球し、余裕があれば空間を作って強打する、というように打法の選択がはっきりしている分、攻め方の軸がしっかりしており、自信をもってプレーしていた」

と話しました。

樊振東選手も張本選手もチキータが得意で、どちらがチキータを有効に使うか、または、相手のチキータを無効化し逆に利用するかが試合のポイントだった様です。

4ゲーム目からは樊振東選手は、YGサーブを出す位置をミドルに変えました。そこから張本選手のフォア前に、サーブを出してきたのです。

これは張本選手にチキータをやりにくくさせるためでした。

しかし張本選手はこの取りにくいコースのYGサーブに対しても、果敢に回り込んでチキータレシーブをしました。

しかも、樊振東選手のバックミドルに返球したのです。

これまで2ゲーム目、3ゲーム目は、樊振東選手が張本選手にチキータをさせて、それを狙い打つ作戦で有利に展開してゲームを連取していました。

しかし4ゲーム目は、このバックミドルに来たレシーブを上手く攻めきれませんでした。

ここが勝負のアヤの1つでした。

その後、張本選手がリードし、樊振東選手が猛烈に追い上げる展開が続くのですが、張本選手が4ゲーム目を取るのです。

2-2で迎えた最終第5ゲーム。

この出だしで張本選手はチキータレシーブを相手のフォアへ送り、意表を突きます。

その直前に馬龍選手が樊振東選手に、

「張本のチキータはフォアには来ない。ミドルやバックで待て」

とアドバイスしていたそうです。(中国語の分かる福原愛さん談)

完全にその裏をかいたワケです。
先制パンチとしては申し分ないです。

その後も互角の試合展開が続くのですが、最後まで自信を持って戦った張本選手が押し切って勝利を収めました。

因みに、団体戦で中国から1人で2勝を挙げたのは、2000年大会のスウェーデンのパーソン選手以来だそうです。

【しかし、団体戦は・・】

張本選手は中国戦で2点を取るという大活躍をしましたが、団体戦は一人で戦っているのではありません。

チームメイトの戸上隼輔選手の勢いや、及川瑞基選手の頑張りがあったからこそ、張本選手が輝けたのだと思います。

予選リーグで3番で出場した及川瑞基選手は、対イラン戦、対香港戦で3-2で勝利しました。

負けてもおかしくない接戦を、及川選手は粘りに粘って勝ちに繋げたのです。

及川選手がこの試合に負けたとしても、結果的にチームとしては勝ったのかも知れません。

しかし、こういう「勝ちを拾う」戦いが、団体戦では特に大切なのです。

布石として、後の試合に影響するのです。

チームメイトだけではありません。

出番の少なかった横谷晟選手、選手を鼓舞し続けた田勢邦史監督、その他バックアップしたスタッフたち。

こういう人たちの支えや思いがあったから好成績に繋がったのだと思います。

スコア上3-0で勝った試合もありました。しかしそこは、世界最高レベルの大会です。楽に勝てた試合は1つも無かったはずです。

今回の結果は、チーム一丸となって戦った末に得られたものではないでしょうか。

もちろん、いくらチーム一丸となっても、いつも勝てるとは限りません。

しかしながら、チームが実力以上の力を発揮して勝ち上がる時には、必ずこういう陰の力の下支えがあるものなのです。

こういうことを分かって行動することが、団体戦ではとても大切なのだと思います。

【スーパープレイの陰で】

今大会ではラリー回数が10回以上の、スーパープレイが続出したように思います。

観ている方としては、ラリーが続き、手に汗を握る展開にハラハラドキドキして楽しかったです。

張本選手対樊振東選手の第4ゲームでは、33回もラリーが続いたスーパープレイがありました。

選手の高い技術力もさることながら、これはおそらく使用している球に影響を受けているのだと思われます。

使用していた球は、中国製の軽い柔らかい材質のものではなかったでしょうか。

私は硬式とラージの両方をやるのでよく分かるのですが、球が軽く柔らかくなればなるほど、ラリーが続きます。

硬式で決まっていたボールが、ラージでは決まらなくなり、必然的にラリーが長くなるのです。

これと同じことが今大会にあったのではないかと思いました。

前陣での打ち合いのラリーが何本も続いたり、後陣に下がってもなかなか決まらないのは、ボールの材質も大きく影響していたのだろうと私は思っているのです。

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